インバウンド事業は、めちゃくちゃ稼げます!~第1回インバウンド維新 JSTO 代表理事の新津研一氏~

この記事は、2021年9月28日(火)に開催をした、トークウェビナー「インバウンド維新」を記事にしたものです。インバウンド(外国人訪日観光)業界の有識者・オピニオンリーダーをゲストとしてお招きし、これからのインバウンド業界の未来を語り、「学び」と「気づき」と「エール」をお送りすることを趣旨としております。第1回目のゲストは、一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会(JSTO)代表理事の新津 研一さんです。お話は、グローバルパワーユニバ―シティを運営する株式会社グローバルパワー 代表取締役 竹内幸一が伺いました。

ショッピングを通して、訪日ゲストに日本を体験してほしい

竹内 株式会社グローバルパワーが主催する定期トークウェビナー「インバウンド維新」。第1回目のゲストには、一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会(JSTO)代表理事・新津研一さんをお迎えしました。新津さんはもともと、小売業界にいらっしゃったとのことですね?

新津氏 はい。伊勢丹に入社をし、売り場を2年間ほど経験した後、17年間、店舗や本部のスタッフとして、主に新規事業開発に携わっていました。

竹内 2013年に一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会を立ち上げられたそうですが、なぜジャパンショッピングツーリズム協会を作ろうと思われたのですか?

新津氏 前職で、ある疑問を持ったことがきっかけでした。デパートで買いものをされる方は、海外旅行が好きな方も多く、みなさん、海外に行っても買い物をされています。そういったお客さまを見ていると、海外旅行の時のほうがだんぜん財布の紐が緩んでいることに気がづきました。うちのデパートでも同じ商品を売っているのに、どうしてわざわざ海外で買うのか? しかも日本の百貨店よりも高い値段の商品も多いのになぜなのか?

そんな時、海外旅行に行く際のサービスを新規開発をする機会がありました。様々な調査をするうちに海外には免税制度があるけど、日本にはそういう仕組みがないことに気がつきました。旅行中の購買意欲は凄い、しかも「免税」というのはおもしろい仕組だなと。

それを日本でできないかと考えるようになりました。それが、「ショッピングツーリズム(ショッピングを通じて日本の魅力を体験してもらう)」によって、インバウンド(訪日旅行客)と国内の事業者を結びつけるという、現在の活動につながっています。

5兆円規模への成長から、一気に99.9%の消滅

竹内 ジャパンショッピングツーリズム協会を設立した2013年の8年前、インバウンド市場はどれくらいの規模だったのでしょうか。

新津氏 600万人・8千億円(2011年)程度でした。その後、コロナ直前に最高期を迎え、3200万人、5兆円規模(2019年)にまで成長しました。

竹内 8年前の600万人から右肩上がりの成長を続けてきましたが、2020年、コロナ禍によってインバウンド市場は99.9%消滅したと言っても過言ではありません。この約1年半、インバウンド事業者はどのような状況なのでしょうか。

新津氏 「インバウンド業界から完全に撤退した会社」、「インバウンドの担当者はいるが、8割は違う部署の仕事をしている会社」、「インバウンド担当者がいて、さらに業務も続けている会社」の3パターンに分かれます。ほとんどの企業がインバウンド事業から撤退したと思われる方が多いと思いますが、意外と残っている企業が多い印象です。

兼業している担当者は、コロナ対応係やSDGs対応係をしているケースが多いようです。では、今でもインバウンド専属の担当者をおいている会社が何をしているかというと、インバウンドが回復した後の作戦の立て直しや商談などです。

あまりにも急激に成長した業界なので、とにもかくにも目の前にいるお客さまへの対応で精一杯だった企業は少なくありません。そのため、戦略を立てる、戦略を見直すなど、できている部分とできていない部分を評価するといった余裕がまったくない状況でした。ところがコロナ禍によって、業務内容を見直す事や、足りなかった部分を埋めるためのアライアンスの商談をするといった時間や機会ができたわけです。

竹内 新型コロナウイルス感染症によって99.9%の需要が消滅したけれど、この間に業務内容の見直しをするなど、頑張っている企業も多いということですよね。

新津氏 はい。できるかできないか、やるかやらないかの判断は、企業体力と企業戦略の違いだと思います。今回、コロナ禍に見舞われたこととは関係なく、日本の成長は停滞ぎみで、今後のさらなる少子高齢化を考えると、インバウンド市場、海外市場というのは非常に魅力的であり重要な市場です。それを理解している経営者は大勢います。しかし、今も取り組むのか、今はやめざるを得ないのか、今だからこそアクセルを踏むのかという判断は、企業体力とのバランスになると思います。

入国制限が緩和される前である今、多くの企業がインバウンド施策を行っていないからこそ、ちょっとアクセル踏んだだけでも絶対に目立ちます。アクセルを踏むのであれば、早ければ早いほど、観光客が戻ってきた時の売り上げアップにつながると思います。

2022年に半分、2023年には再び5兆円規模の市場に回復する

竹内 日経新聞に「G7の中で新規留学生の受け入れをしていないのは日本だけ」と掲載されていました。2021年10月現在、日本はすべての外国人の入国を停止していますが、いつからインバウンドは入ってくると思いますか。

新津氏 予測は難しいのですが、わかっていることはいくつかあります。例えば、外国人を受け入れる順番です。まずはレジデンストラック(就労・留学等の長期滞在者)から始まって、次にビジネストラック(出張者など短期滞在者)があいてから、最後に観光という順番で緩和されていくと思います。また、コロナが収束するかどうかと、国際観光が再開するかどうかは、リンクしている面としていない面がある、などです。

当然、ある程度までの収束は必要ですが、経済と外交の視点からコロナが完全に収束するまで国際観光が止まったままということはあり得ません。アジア圏は慎重な国が多いのですが、欧米ではすでに観光客の受け入れを始めた国もあります。ワクチン接種が進んだことが理由だと思いますが、実際には日本の接種率と大差はありません。しかも、ワクチン接種が済んだ後も、新規感染者数や重傷者数、死亡者数が日本より多い国も多々あります。しかし、観光客の入国制限を緩和しています。

もちろん、また感染が広がれば再び閉鎖されることはあるかもしれません。今後は、緩和と閉鎖が繰り返されることも念頭に、オールウェルカムではなく、2カ国間同士での外交折衝のうえ、早ければ年内(2021年)から徐々に緩和されていくのではないでしょうか。

竹内 2019年の約5兆円規模の市場にはいつ頃戻るイメージをお持ちですか。また、政府としてはコロナ禍を経たうえでも、「2030年に15兆円市場を目指す」という政策は諦めてはいないのでしょうか。

新津氏 私は2022年に半分の2兆円に回復し、2023年に5兆円に完全回復すると予測しています。政府の政策も変わらないと読んでいます。インバウンドはまれにみる市場です。「ようこそジャパンキャンペーン」から「ビジットジャパンキャンペーン」と名称は変わりましたが、政権が自民党から野党政権になり、さらに自民党に戻っても続いています。政党が変わっても引き継がれるキャンペーンはなかなかありません。そういう意味で、重要性や目指す方向が政党を超えて共通認識をされているのだと思います。

今後のインバウンド業界、多様性を前提にビジネスを組み立てることが大切

竹内 今後インバウンド業界で生き残るためのポイントは何でしょうか。

新津氏 「目の前のことをとにかくやる」のはもちろんですが、「今だからできる長期スパンでの改善にじっくり取り組む」ことや「未来に向けてイノベーションに挑戦する」、この3つをバランスよく取り入れることだと思います。長所を伸ばし短所を埋める事や、教育など人的投資をするなど、時間をかけないとできないことに取り組んだり、イノベーションを起こしたり、新たなことにチャレンジしたりすることが大切です。

人材でいえば、社員に中国語や英語など、訪日観光客の接客ができる程度の語学力を身につけさせるにはじっくり取り組む必要がありますし、イノベーションであればデジタル化などやれることはたくさんあると思います。お金をかけずにできることも多々あります。例えば、既存のデジタルのプラットフォームに情報をのせることです。ツーリストは日本にきたら100%スマホで動いています。営業時間や場所など正しい情報をのせるのは当然ですが、日本で日本人がどのように自分たちの施設を楽しんでいるのかを、外国語できちんと発信することが大切です。「日本人が安心して使っている施設だから大丈夫」という訪日客へのプロモーションは、誘客に欠かせません。

そして、すべてにおいて重要なことはSDGsでも掲げられている「ダイバーシティ」です。多様性を会社に取り込む、多様性に対応する、多様性があることを前提にビジネスを組み立てる、こういったことが大切になってきます。インバウンドビジネスやグローバルビジネスをする人は、外国人の視点や、外国からの視点がとても重要になります。

時々、「中国人の気持ちがわからないので教えてください」といった相談を受けることがありますが、「私は中国人ではないのでわからない」としか答えようがありません。中国人をはじめ、身近に外国人はたくさんいます。ご近所にもいるだろうし、社内にもいる。知りたい国の人に直接気持ちを聞くことは普通にできる時代ですし、それがもっとも確実な方法です。当たり前のことなのに、日本人に外国人の気持ちを聞いてしまう日本人は少なくありません。まずは、身近な外国人と仲良くなることからチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

コラボして「オール○○」での取り組みを推進する

竹内 今後、新津さんがインバウンド業界で挑戦したいことは何ですか。

新津氏 「爆買い」という言葉が流行った頃から2019年までの数年間、インバウンドブーム、インバウンドバブルなどと言われていました。私は、それは間違っていると思っています。あれはブームではなくグローバルトレンドです。人が自由に世界中を行き来し、欧米など遠くから来る人たちは長期間滞在する。それは当たり前のトレンドです。ブームではないからこそ、必ず復活すると私は思っています。

ただし、ブームと呼ばれていた数年間、見落としていた部分や努力を怠っていた部分があったのは事実です。そこにしっかり向き合っていかなくてはいけません。具体的には、この3つです。

1) コラボをして、「オール○○」で取り組む
2) ダイバーシティ
3) インバウンドで稼げる理由をきちんと発信していく

まず1つ目ですが、インバウンド業界で一番大切なことは、「コラボレーションする」「共に働く」という「協働」です。お互いを認め合って、文化、国、業種の違いはもちろん、競合だと思っていた人たちとも手を携えて「オールジャパン」で取り組む、「オール自分たちの街」で取り組む、「オール業界」で取り組むことが、新しい市場を作り、新しい価値観を生み出すことにつながると思います。

よい例を紹介すると、インバウンドの成長期に伊勢丹が100万円の広告費を使ってインバウンド向けのキャンペーンをしたけれど、売り上げは上がりませんでした。しかし、同じ100万円をかけてドンキホーテさんが「新宿」のキャンペーンをしたら、伊勢丹の売り上げも上がりました。「新宿には伊勢丹やドンキホーテ、ルミネ、ヨドバシカメラなど、素晴らしいショッピング施設がたくさんあるけど、歌舞伎町も面白いし、美味しいラーメン屋さんもたくさんある。街のおじさん、おばさん、遊んでいる若い子たちの姿も面白い」と。

つまり、個々のショップではなく「オール新宿」で戦ったほうが新宿に来る人は爆発的に増え、その結果、伊勢丹をはじめショップの売り上げも上がるという構造です。1社が100万円出して自社の宣伝をするよりも、10社で10万円ずつ出して、「オール○○」で協働することが大事ということを、もっと強く発信していきたいと思っています。

竹内 みんなでインバウンド受け入れ、PRをしていこうというのは本質な気がします。

新津氏 そうです。オーバーツーリズムが問題になりましたが、街の人たちを巻き込まないから「外国人を呼ぶから街が汚くなった」とか「面倒臭い」などという話になってしまいます。最初からみんなでやろうとタッグを組めば、こういった課題は解決できるはずです。

2つ目は、先ほどもお話した「ダイバーシティ」です。観光の醍醐味、インバウンドの醍醐味は、ダイバーシティを実現できることです。何十年も前から「いよいよ国際化の時代だ」と言いながら、日本人の多くは英語がしゃべれません。

外国語を話すレジデントが増えたり、同僚に外国人が増えたりすることで、多言語のコミュニケーション、ノンバーバルコミュニケーションが当たり前になる。それが一般市民レベルでグローバル化してきたということであり、ダイバーシティのあるべき姿だと思います。インバウンドは身近に外国人が来て、話しをせざるを得ない環境になるので、インバウンドを通してグローバル化、ダイバーシティを実現したいと思っています。

3つめは、インバウンドで稼げる理由をきちんと伝えることです。「インバウンドは稼げる」と言っている人は多いけど、なぜ稼げるのかをきちんと伝えられていません。その弊害が、訪日客に「日本は安いものがたくさんある国」というイメージを植え付けてしまったことです。もちろん、それも悪いことではないけれど、そこばかりが注目されることで、日本は世界一安い国になってしまいました。何十年か前、日本人は東南アジアに行って、半ばバカにしながら「ラーメンが60円で食べられるの!?」と、豊かな国である日本から強い通貨を持って、「安い食事が食べられる貧しい国」を訪れていました。今は逆です。コカ・コーラ1本が1,000円、ハンバーガー1つが2,000円という国から来訪した観光客に「牛丼1杯が300円なの!?」と思われています。

しかし、外国人観光客は安いものを消費したいだけで日本に来ているわけではありません。日本の文化や、おいしい食事、また現地の人の優しさだったり、現地でしか得られない経験ができたり、そのためにお金と時間をかけてやって来ます。旅とはもの凄く付加価値の高いものです。

本来、インバウンドは原価のない、「事や体験」がお金になる市場です。工夫次第で原価のないものが高く売れるのが旅なのに、なぜ日本人は原価のあるものを安く売ろうとしているのでしょうか。わざわざ相手が払おうと思っている金額より、貧乏になる選択をし続けているのがインバウンドの現状です。そこも変えていきたいですね。

インバウンドはめちゃくちゃ稼げます

私がみなさんに気づいてほしいと思っていたこと、そして私自身も改めて気づいたことは、ダイバーシティの素晴らしさと、ダイバーシティの力に気づけことだと思います。

学びについては、「みんなで一緒に学んでいきましょう」ということです。「これが、今自分が持っているすべてのノウハウです!」と、今日出し切っても明日にはまた新しい情報が入ってくるので大丈夫です。学んだことは惜しみなくシェアしましょう。

そして、声を大にして言いことは「インバウンドはめちゃくちゃ稼げます」ということです。インバウンドとグローバル市場は、時間も時空も超える事業です。稼げるし、とても楽しい業界です。それを糧にこれからも一緒に学び、楽しんでいきましょう!

 

 

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