これからの日本社会を担うのは「次世代日本人」~株式会社グローバルパワー・代表取締役 竹内幸一が語る国家戦略~

日本は明治維新以降、長年移民を受け入れずにきました。ナショナリズムの台頭から、明治政府は「富国強兵」を掲げ、自国民を中心に日本を強くしていくという施策を打ち出し、その精神は今日まで継続してきました。それは、人口が増加の一途をたどっていく社会においては適切な政策だったかもしれません。

しかし、2008年以降、日本は人口減少社会に変わり、目下の課題は「社会保障をいかに維持していくか」ということです。このままでは、社会保険料の支払い手はどんどん減っていきます。

それをどう食い止め、増やしていくのかを考えたとき、3つのソリューションポイントがあります。

①高齢者の方々が活躍できる場を増やす
②女性の方々が活躍できる環境を整える
③外国人人材が活躍できる環境を整える

なかでも、私が国家戦略としてより真剣に考えるべきだと思っているのが、③の外国人人材です。それを実現するためには、次の2点を深く考える必要があります。

・「出入国管理及び難民認定法(入管法)」のよりよい改正

・日本人や日本企業の「外国人に対する意識改革」

これらは、今後の日本社会のために重要な戦略であるにもかかわらず、依然として日本政府は明確なビジョンを打ち出せずにいます。政府だけに任せることなく、私たち国民に何ができるのか、そして私が考える理想とすべき日本の姿についてお話したいと思います。

現在の入管法の問題点を考える 入管法改正は国家戦略

外国人人材が日本で活躍できる環境を整えるためには、まず「出入国管理及び難民認定法(入管法)」のよりよい改正が必要です。この法律は人口が増加していた時代に基本設計されています。2008年以降、人口減少社会に転じた日本においては、決してマッチしている法律とは言えません。これまで何度も改正されてきてはいますが、まだまだ修正の余地は残されています。入管法の改正は日本の重要な国家戦略であるのにも関わらず、明確なビジョンが依然として打ち出されていないのが問題です。

これについては、個々が声をあげているだけでは、なかなか政府は動いてくれません。そこで、私は「政府に行政政策を提言できる民間団体」の必要性や「外国人労働者について考える機会」を提供する組織が必要だと考え、2016年4月「一般社団法人外国人雇用協議会」を設立しました。法務省と、きちんと意見交換ができ、仲良く喧嘩ができる組織です。これから、日本の国をどんな形にするか決めるためには、政府だけではなく、様々な視点からの意見を反映して、多くの方で議論を進めることが重要だと考えています。

例えば、2019年4月に創設された、新しい在留資格「特定技能」ですが、14業種のうち12業種は「特定技能2号」がありません。日本で働ける5年の期間で母国に帰してしまって良いのでしょうか。どの業種でもどの職種でも、必要とする人がいて、必要とされる人が存在する限り、その人たちが「日本で生きていく選択ができる社会」「頑張ろうとしている人が、がんばれる社会」にするべきではないかと思います。日本の社会の役に立とうとする人をふやすことが大事で、「日本で稼いで母国に帰れば良い」という入管法の改正は適切ではないと思います。

もちろん、法務省も入国管理局の方々も一生懸命にやられているのは十分にわかっています。しかし、こういった政策提言が増えていくことで、以下のような大きなプラスを生み出すと思っています。

「政府だけでは見えない様々な視点での意見交換と、多様性のある議論を進めることができ、入管法のよりよい改定の近道になる」

日本は少子高齢化社会という深刻な問題を抱えています。10年後、50年後もよりよい日本であるために、この問題への着手は急務です。だからこそ、外国人人材の受け入れをどうするのか、法的な枠組みである入管法について、国をあげて取り組まなくてはいけないのです。

外国人への偏見をなくす

次に外国人人材を増やすために重要なことは、日本人や日本企業の「外国人に対する意識改革」です。たとえ法が整備されたとしても、それを実行する人間が対応できなければ意味がありません。

残念ながら、日本には外国籍の方に対する偏見を持っている人たちが少なからず存在します。昔ながらの価値観を持った方々が口にする懸念は、「教育が遅れているでしょう?」とか「犯罪率が上がるのでは?」といったことです。

長らく移民を受け入れずにきた日本の弊害と言えますが、これらは、まさに偏見であり、誤解です。現実にはまったくそんなことはありません。むしろ、日本で活躍している外国籍の方は非常に優秀な方が多い。日本人のほとんどは英語や中国語など、第二言語でのコミュニケーションは苦手だと思いますが、彼らはもっとも難しい言語のひとつである日本語を流暢に操っています。

日本をどんな社会にしたいのかというビジョンを掲げ、そのビジョンのもとにプランを設計し、その上で私たち日本人が外国人の方々にどう活躍してほしいのかを明確にしていけば問題は生じません。そのためにもっとも重要なのは次の2この点だと思います。

・「義務教育で多様性を学ぶ」

・「外国人に対するきちんとした雇用体系を作る

外国人に偏見を持っている方々は、「外国人を知らない方」や「外国人と真剣に向き合った経験がない方」だと思います。一度でも外国人と真剣に向き合った経験があれば、自分とは違うものや知らないものへの恐怖、根拠のない偏見はとり除かれるはずです。義務教育でも「これからもっと多様化する日本社会にむけて、自分とは違う価値観や背景をもつ多様性ある人たちと、どう合意形成をし社会をより良くしていくか」ということを学び考える機会が必要でしょう。国民全体が多様性について学んでいけば、政府としても、外国人に対して不勉強な方々がもつ不安や恐怖、偏見に配慮しすぎる政策をうちだす必要はありません。

私が代表を務める「株式会社グローバルパワー」では、そういった「学び」と「雇用」をつうじて外国人と向き合う機会を提供するために、シンポジウムやセミナーによる情報発信を行なっています。また、日本で働きたい外国人と外国人を雇用したい日本企業のマッチングも行なっています。

私たちが日本企業に外国人人材を紹介するにあたって気をつけているのは、より日本人のマインドに近い外国人をマッチングすること。日本語が堪能で日本に順応している方を雇用していただくことで、日本の企業に、外国人雇用の成功体験を積み重ねてもらうためです。それによって偏見をなくしやすくなります。

現在は、優秀さよりも、日本の文化に順応できる外国人が企業で活躍している傾向にあります。それはまだ日本人がグローバルな時代に順応できていないからであり、外国人雇用の成功体験の先には、「日本社会に順応しにくいけど優秀」という外国人も受け入れられる土壌ができてくるはずです。

これからの時代、外国人だから、日本社会に順応できないからという視点で人を切っていけば会社は成り立たなくなっていきます。日本に来て、日本の仲間になりたいという外国籍の方々を、いまから増やしていくためにも、10年、50年、100年というスパンでの国家ビジョンを策定して、声高らかに、議論を交わしていく必要があるのではないでしょうか。

ラグビー日本代表のような日本を目指そう

日本の未来に必要な国家戦略についてお話してきましたが、私が考える理想的な日本社会とは、「ラグビー日本代表のようなチーム」です。ラグビー日本代表のチーム構成は、半分が日本人で、半分が外国人。日本国籍を取得しなくても、最低3年間の日本居住歴と、日本でのプレー経験があれば、ラグビーでは日本代表の資格を得ることができます。

日本国籍を持つ日本人と、外国籍を持つ外国人が、「ワールドカップでベスト8に入る」という大きな目標に向かって一致団結し、努力して、素晴らしい成果をあげました。これこそが、今後の日本が目指すべき姿だと私は思います。

正直、言うほど簡単なことではありません。ラグビー日本代表の選手たちも真のチームを築き上げるために、大変なこと、面倒なことをたくさん乗り越えてきたはずです。日本人同士なら阿吽の呼吸でスムーズにいくことも、相手が外国人となれば価値観もプライオリティも異なり、摩擦が生じることも多々あったことでしょう。

でも彼らはそれを乗り越えて、それぞれの違いを尊重しあえたからこそ、成果を上げることができたのだと思います。日本人同士の楽な環境にいる限り、違う視点は生まれないし、互いの違った能力を引き出し、活かすこともできません。

「グローバルパワー」では、ラグビー日本代表チームのような組織づくりに早くから着手してきました。現在、社員200名のうち、外国人は180名にのぼります。割合で言えば、ラグビー日本代表を大きく凌ぐ勢いで外国人の雇用を積極的に行なってきました。

そんな中で、私が大切にしてきたのは、この1点です。

「面倒くさがらず、諦めず、徹底的に話し合う」

お互いに譲れないポイントは必ず出てきます。そこをいかに尊重しあうか。重要なポイントはしっかり押さえた上で、互いに譲歩できる部分は譲歩する。様々な人種が集まる組織には、このバランスが何よりも大事だと思います。相手をリスペクトする気持ちがあれば、必ず着地点は見つかります。だからこそ、前述したような偏見をなくす必要があるのです。そうして良いチームになっていくことで、日本にも意外性と多様性が生まれるのではないでしょうか。

私が理事を務める「外国人雇用協議会」では、日本を支える外国籍の方々を「次世代日本人」と呼んでいます。これは初代会長である堺屋太一氏が命名しました。

「次世代日本人」をどう受け入れ、どう増やしていくのか、それを徹底的に話し合い、ビジョンを設計し、実行していくことでしか、日本の未来はひらけないとすら感じています。

「次世代日本人」が働きやすい日本にすることが国家戦略であると信じ、これからも政府に働きかけ、積極的に活動していきたいと思っています。

 

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ABOUTこの記事をかいた人

株式会社グローバルパワー 代表取締役 1974年東京生まれ、群馬県藤岡市育ち。米カリフォルニア州立大サクラメント校を経て、1998年外資系ワイン商社に入社。2003年フルキャスト入社、05年社内ベンチャーとして外国人留学生採用支援事業部の設立に参画。09年事業部のMBO(経営陣による自社買収)を経て、グローバルパワーを設立。一般社団法人 外国人雇用協議会 発起人・理事。