外国人雇用とマネジメント企業へのインタビュー ~株式会社インフォキュービック・ジャパン 山岸 ロハン氏~

グローバルパワーユニバーシティ 外国人雇用とマネジメントの先人に学ぶコーナー第8弾は、国内外において数多くの企業にインターネット・マーケティングを提供する 株式会社インフォキュービック・ジャパン 山岸 ロハン氏です。多言語ビジネスのコミュニケーションについて編集部の神(じん)がお話を伺いました。

山岸 ロハン(やまぎし ろはん)
株式会社インフォキュービック・ジャパン
代表取締役

■会社プロフィール
設立:2007年1月
従業員数:約50名
外国人社員数:約25名(中国、台湾、韓国、タイ、フィリピン、アメリカ、イギリス、イタリア、ハンガリー 他)

「日本語が必要」なのは誰のため?

神 早速ですが、なぜ外国人の方を採用しているのですか?

山岸氏 外国人を採用している理由は当社が多言語デジタルマーケティング会社だからです。ただし、「日本語は出来なくてもいい」という前提で採用しています。得意な言語やスキルは活かしてもらいますが、国籍を指定する形での採用ではありません。

神 「日本語が出来ない方」を採用してコミュニケーションに困ることはありませんか?

山岸氏 インフォキュービック・ジャパン(以下:インフォキュービック)には日本語が出来ない外国人もいますし、英語ができない日本人もいますが、やりとりできています。

「言葉が違うから」と壁をつくらなければ、コミュニケーションをとることは可能です。そして「日本語が出来る人しか採用しない」というのは日本企業の一番の課題だと思っています。

日本で外国人の方に仕事をしてもらいたいと思った時、2つのパターンがあると思います。

1つは単に【労働力として】、もう1つは【海外文化を知る人として】です。

例えば訪日観光客の対応であれば、後者のように、その国から来た方たちの文化を知っておく必要があります。マーケティングなど、文化的背景の理解を必要とする仕事をする場合も同じです。

現状の日本企業は、後者の場合でも、外国人に日本語能力を求めすぎだと思います。

神 それは上司が「指示に困るから…」という問題があるからでしょうか。

山岸氏 はい。採用する側が「外国語が出来ないから」という理由が大きいと感じています。

でもそれは、グローバル化の反対だと考えます。それぞれ事情もあるとは思いますが、スキルがあり、かつ、日本語も出来てほしいというのは、採用のハードルが高いです。それは人材側ではなく、採用する側の意識改革が必要なのではないでしょうか。

「高い日本語レベル必須」にすることで「それなら日本じゃなくてもいいや」と思ってしまう外国人が多く居ると思います。日本への憧れがあるから日本で働きたい。という方も多くいらっしゃいますが、単純にお金を稼ぐ観点で考えると「絶対日本に行く必要はない」かもしれません。

例えば、東南アジアの方で英語が少しできれば、シンガポールで働くチャンスもあります。この視点から見たときに、日本だけではなく世界の視点から、どのように海外人材を受け入れるかを考える必要があります。

これからも「高い日本語スキルが必須」と言い続けて、こちらの都合ばかりで採用を続けていたら、「20年後どうなるのか?」と考えると、日本に働きに来る外国人が居なくなるのでは、という危機感を持っています。

テクノロジーを活用すれば高い外国語スキルは必要ない

神 「言葉が違うから」と壁をつくらなければ何とかなるものでしょうか?

山岸氏 例えば先日、韓国の企業と取引がありました。私は韓国語が出来ませんし、韓国の方も日本語が分かりません。

そうすると、会いに行くときは「翻訳者を入れよう」という話にはなりますが、実務では直接メールのやり取りをしますので、先方は全部、韓国語で送ってきます。私はそれをグーグル翻訳を使って読んで、日本語で返信します。先方はその日本語をグーグル翻訳を使って韓国語に直して読んでいます。

このような状況でも、共通のゴールが分かっていれば目的を達成できます。このような意識は、私たちがとても大事にしていることです。外国語で100点のメールが書けなくても伝わることは十分にあるので、テクノロジーを活用して、他の言語に対して勇気を持ってもらいたいと思います。高い外国語スキルは必ずしも必要ありません。

他に出来ることは、役割分担です。インフォキュービックの場合、多くのサービスは日本人のお客様に提供するので、営業担当は日本人です。一方で、海外マーケティング担当は外国人社員に言語を活かしてもらいます。そして、社員同士の意思疎通は工夫してコミュニケーション出来れば良い、というような意識を私は持っています。

「外国から来たから特別」はない

神 国や言葉に偏らないとなると、人材を採用するときは、何を確認していますか?

山岸氏 「デジタルマーケティングを通じて世界を繋げる」という当社のミッションに興味があるかどうかが前提条件です。

私の面接ではスキルの話はしません。1次面接で現場の上司と実務レベルの話をしていますから、私からは、どういう仕事の仕方が好きなのか、ミッションになぜ共感するか、こういう人と働いたら面白いか、自分に持っていないものがあるか。というような観点で面接するようにしています。そして何より人間性です。よい人を雇ってから、一緒に考えながらやっていくという形です。

神 「よい人」と言うのは、具体的にどんな人でしょうか。

山岸氏 私たちの会社の雰囲気は和やかさ、自由度の高さがあります。例えば、自分専用のデスクがあっても全くそこに座らずフリースペースで仕事をしている外国人もいます。

私としては、そういうところにこだわりません。もちろん「会社に何時に来る」などのルールはありますが、基本的に成果を出してもらえれば良いと考えます。そういう雰囲気や考え方と合うかどうかというのは大事です。

神 外国人の社員が「母国に一時帰国するから長期休暇を取りたい」といった場合はどうしていますか?

山岸氏 「外国から来たから特別」ということはしていません。日本人も含め、従業員は有給休暇などの休みをつなげて旅行に行ったり、母国に帰ったりしています。もちろん各チームで業務が回るように調整はした上で、自由に取るというかたちです。

社内の共通言語はありません

神 日本語が出来ない人、英語が出来ない人、両方が社内にいるということでしたが、実際のコミュニケーションはどのようにしていますか?

山岸氏 カタコトの日本語しかできないけど英語が得意な欧米圏の人と、英語が苦手な日本人、というシーンでは文字や会話を組み合わせて、コミュニケーションを取れていますね。社内の共通言語は「日本語」「英語」というようなルールもありません。

例えば社内会議の資料は、日本語と英語が入り乱れています。日本語を話しながら資料は英語とか、英語で話しながら資料も英語とか、受け取る側のメンバーによって個々が判断しています。「資料は何語」というルールはありません。

神 それは、プロジェクトをスムーズに進めたいという考えや、思いやりとして相手に伝わるようにしようという配慮があるのでしょうか?

山岸氏 そうですね。仕事は理論だけでなく感情も大事ですから、「お客様を満足させる」ことを中心に考えたときに、社内の意思疎通をしっかりしなければなりません。

その意識が社員に浸透していて、時と場合によって言葉を使い分けるようになったのだと思います。言い方を変えると「伝わるようにやるしかない」という文化が自然に出来てきたのかなと思います。

違う視点では、私たちは日頃から多言語で仕事をしていますから、どこの国の企業ともお付き合いしやすいです。例えば、海外企業が日本のマーケティングをしたいとなったとき、ほとんどの海外企業は英語での取引になりますから「英語でのプロジェクト」ということで日本企業にとってハードルが高くなりがちです。しかし、私たちの場合は通常の仕事として出来るので負担になりません。

いろんな国の人といると楽しい!

神 多国籍だからこそ良いところはありますか?

山岸氏 純粋に、「いろんな国の人といると楽しい!」というのがあります。

理屈以前に、文化の違い、思考の違いから、「こういう考え方があるんだ」とか、「日本だとこういう考えは無かったな」とか、そういう発見や面白さがあります。

逆に、色々な国の人がいるからこその難しさも感じたことはあって、例えば毎回の会議で日本語と英語両方で全てを話すことは出来ないので、細かいニュアンスや考え方を「伝える」というときにチャレンジを感じます。

クリティカルな資料は2言語対応

神 確かに全てを複数言語でお話するのは難しいと思いますが、必ず翻訳をしている資料などはありますか?

山岸氏 最近は、雇用契約書などの書類を日本語と英語の2言語にしています。クリティカルな所について、その言語が読めないのにサインする。というのは精神的な負担が大きいと思ったからです。

翻訳会社に依頼して完璧な英文契約書をつくるというのは値段も高くなりますが、日本語の雇用契約書に簡易翻訳を添えるとか、ちょっとしたことでも出来ることがあるので、そういう取り組みをはじめています。他にも重要な連絡事項などは英語と日本語両方でアナウンスしています。

私もアメリカに住んでいて思いましたが、外国に行くとどうしても「疎外感」を感じることがあると思います。そういう立場の人に対して、安心できる環境をつくれるよう心がけています。

神 敢えて伺いますが、「外国人は個人主義で日本人と一緒に働きづらい」と感じたことはありますか?

山岸氏 そう感じたことはありません。また、「郷に入っては郷に従え」ではないですけれども、「私は日本に居る」という自覚がある外国人社員が多く、日本の社会・文化を尊重してコミュニケーションを取ってくれていると感じています。採用で人物像を意識していることもありますが、調和性があり優しい人が多いですよ。

自分たちが「ありたい姿」でいること

神 山岸さんの会社づくりはアメリカでの影響が強いと感じます。

山岸氏 はい、経歴からも分かるように私は日本の会社で働いたことがありません。だから、一般的な日本企業のルールに倣う経験がありません。

ルールは必要であれば作りますが、勝手に出来るものではありません。恐らく、ルールというのは過去に決まりやモラルを守れなかった社員がいたから作られるのではないでしょうか。

例えば、ビジネスマンとして時間を守るという基本的規律を全員が持っていれば、遅刻申請書を記入するルールは必要ありませんね。でも基本的規律を守れない人が増えたりすると、ルールを改めて作成することになります。

インフォキュービックは基本の規律を大事にすることで、ルールは少なく自由に出来ていると思います。そもそも、人は「自由でありたい」と本質的に思っていると思います。だから出来るだけ自由な環境をつくっていきたいと思います。

世界と日本が繋がるデジタルマーケティング

神 山岸さんの国際的な感覚や社会へのビジョンはいつごろから生まれたのでしょうか?

山岸氏 私は日本で生まれ育ちましたが、アメリカの大学を卒業して現地で仕事していた頃、「何のために自分は生まれて、何のために自分はスリランカと日本のハーフで生まれたんだろう。」と自身の使命を考えるようになりました。

そして「どこの国も平和であり、仲良くあってほしい。そのために何かしたい。」と思いました。そもそも自分が、そのお陰で生まれたわけですから。

この使命感の延長線として、デジタルマーケティングを通して世界と日本が繋がってほしい、と考えています。

インバウンド事業であれば、日本の会社を支援することで海外の人に日本に注目してもらい、日本の良いところを知って帰ってもらいたいと思います。逆にアウトバンド事業であれば、海外にいながら日本の良いものを知ってもらいたい。どちらも日本が外貨を稼ぐチャンスです。

日本は今人口が減っていますから、世界で日本企業が活躍して、外貨を獲得してもらい、結果的に日本が豊かになれば嬉しく思います。

異文化の共通点は何か?を見つける

神 デジタルマーケティングで社会が繋がるというのは、どんな世界なのでしょうか。ボーダレスではないからこそ、文化・言葉の違いがあり面白いと思います。世界中が繋がるとそれは無くならないのでしょうか?

山岸氏 確かにグローバルでもボーダレスでも、すべての国が同じものを食べたら不幸せです。

それぞれの基本的な文化(生活)の上にある、共通点を探したり、良いところを共有したりすることが大事だと思います。逆に自分と相手の文化が違うからといって、相手を無理に納得させようとしたり、相手の文化を壊したりするのは良くありません。

繰り返しになりますが、基本的な文化の上の「共通点は何か」というところを考えないと、文化に優しくなれません。それぞれ良いところがあるのですから「相手をどうにかしよう」という相手を変えるマインドではなく、自分が変わっていけると良いですね。

文化は比べられないもの

神 文化や言語に関するお話を伺っていると、異文化理解や言語対応など、日本社会は遅れていると感じてしまいます。

山岸氏 確かにそうなのですが、あまり「遅れている」と思わない方が良いかなと思います。

欧米と日本を比較するときに「遅れ」という表現が多くなりがちですが、この表現は良い部分が見えなくなり、「遅れている=ダメ」と言う風に捉えがちになります。

でも、見方を変えれば日本の良いところも沢山あると思います。文化は比べられないものですから、「今の日本はダメだ」ではなく「足りないところもあるけれど良いところもある、もっと良くしよう」という形でありたいです。

神 日本の良いところはどこでしょうか?

山岸氏 例えば、日本はチップが無い文化です。でも、お店に行くと店員さんが親切にしてくれます。アメリカだとどうしてもチップを期待したサービスになりがちです。

チップ制は合理的ではありますが、日本ではそういう見返りが無くともホスピタリティが高いと感じます。世界に出てみたときに、この日本のホスピタリティは良いなと思います。

日本で恵まれている事の多くは「物」だけではなく「文化」であり、形では無いので難しいですが、そのような文化を世界に持っていけると良いと思っています。

採用したい人材の国に行ってみよう!

神 これから外国人を採用したいと考えている方に向けてメッセージをお願いします。

山岸氏 ご自身が、採用したい人材の出身国に行った方が良いです。旅行で、2,3日でもいいですから、深く考えずに行ってみること。

外国人を採用したいからどうあるべきか、などと深く考えたり、机上の空論をしたりするよりも、まずは気軽に行った方が良いと思います。とにかく実際に行ってみるべきです。

そして、自分自身が行くことで外国での不便さも感じることが出来ます。そういった面でも、外国人にどんなサポートが必要か見えてくるのではないでしょうか。

ABOUTこの記事をかいた人

神英美子

株式会社グローバルパワー GHR事業本部所属 東京都生まれ。日本女子大学を卒業後、大手ゼネコンを経て、2016年グローバルパワーに入社。趣味はGoogle Mapsを辿ること。ペーパー1級建築士。