外国人雇用とマネジメント企業へのインタビュー ~株式会社 Next Innovation 牧 直道氏~

グローバルパワーユニバーシティ 外国人雇用とマネジメントの先人に学ぶコーナー第7弾は、外国人雇用ニーズに応える外国人材総合支援サービスと通信事業やIoT事業に特化する、株式会社 Next Innovation(株式会社USEN-NEXT HOLDINGSグループ)牧 直道氏です。リアルな外国人雇用についてグローバルパワーユニバーシテイ編集部の神(じん)がお話を伺いました。
牧 直道(まき なおみち)
株式会社 Next Innovation
代表取締役社長
■会社プロフィール
設立:2013年10月
従業員数:16名
外国人社員数:6名

採用は読解力やアウトプット力も確認 

 外国人社員はどのようなキャリアの方を採用していますか?

牧氏 中国出身とベトナム出身の社員がおり、男女比は半々です。キャリアは新卒と中途採用の社員が所属しており、前職も様々です。当社のサービスの1つに、「特定技能」や「留学」の在留資格を持つ方へお仕事を紹介するサービスがあります。

このサービスの利用者様は日本語が苦手な外国人が多いため、当社の外国人社員が母国語を使い、対面で希望条件等をヒアリングし、仕事紹介を行います。母国語で会話をすることで、企業の立場に立って人柄や信頼度を確認するのはもちろん、求職者に仕事内容や条件をしっかり説明することが出来、ミスマッチングを防ぐことに繋がります。

神 社員採用についてはどのような選考基準がありますか。

牧氏 私たちの会社のビジネスに興味があるか、そのビジネスを通して自分がどうなりたいか、どう貢献したいか、という気持ちを重要視しています。価値観まで一緒というのは家族でも難しいですから、あくまでもビジネスへの興味と、本人のビジョンを確認しています。

日本語スキルは、会話力については面接の場でわかりますが、読解力については文章を投影して音読していただいたり、PCタイピング試験をしています。というのも、ネクストイノベーションでは特定技能の在留資格の方を対応しているため、人材紹介業だけでなく入管法の知識がないと仕事ができません。

会話や漢字が得意でも、法律の文章が読めて咀嚼でき、さらにアウトプットできるかどうか、確認しておく必要があります。

日本人側も言葉のニュアンスをくみ取る努力を

神 社員や求職者との間で、言語や文化の違いはどのように乗り越えていますか?

牧氏:文化の違いで言うと、例えば、最初に提出される外国人求職者の履歴書の内容が正しくない事は多々あります。日本の就職に馴染みのある方あれば、正しく書くのが常識ですが、外国人求職者の中にはエントリー書類の記載内容が間違っていても、就職に影響しないと考える方がいらっしゃいます。

日本語でのコミュニケーションが難しい求職者は、日本の選考書類の書き方や働くときの常識を教わる機会も少ないでしょうから、母国語でフォローし、書類の修正にとどまらず、日本で働くために必要な常識や習慣のレクチャーが必要だと思います。

言語については、外国人社員の日本語能力が高くても、日本人側がニュアンスを汲み取る努力が必要だと考えます。例えば、日本人は「キラキラ」「綺麗」「美しい」「煌びやか」などの使い分けが自然とできますが、外国人が「美しい」という単語でしか表現できない場合、彼・彼女が言いたいのは「キラキラ」なのか「綺麗」なのかを汲み取らないといけません。

「習慣としての気遣い」を都度レクチャーしています

神 仕事の進め方について工夫していることはありますか?

牧氏 日本企業で初めて働く方と仕事をする場合は、特に、事ある毎に説明をする必要があります。例えば先日、覚えのないSNSアカウントが会社公式として作成されていました。聞いてみると外国人社員の1人が作成したということでした。

多くの日本人は「会社の許可を得ずに会社の名前でSNSアカウントをつくってはいけないのではないか?」と思いますよね。その本人に尋ねてみると「会社の指示で外国人求職者を集めるのは私の仕事。なぜいけないのか?」ということでした。

他にも「書類は揃えて相手が読む方向に向けて渡す」「差し出された名刺を雑に扱わない」などが出来ない外国人社員は多くいますから、事例ごとに日本人が習慣として身についている『気遣い』ついてレクチャーしています。

“外国人だから仕方ない”ではなく1つ1つの事象に都度対応することを大事にしています。このような背景から、日本企業で数年の勤務経験がある方を採用するのと、日本で初めて働く方を採用するのとは、かなりの違いがあると思います。

神 1つ1つの事象に都度対応ということですが、どのようなマネジメント体制にしていますか?

牧氏 現在は外国人6名に1名の日本人リーダーという体制です。リーダーは人材紹介事業の経験はありますが、日本語しか話せませんし、外国人と働くのも初めてです。

この日本人リーダーと外国人社員のやりとりを見ていると「ケンカばっかりしている」という印象です(笑)正確に表現すると、何でも言える関係をつくっているので、良くも悪くも「なぜそれをやらなきゃいけないのか」「なぜやってはいけないのか」を納得できるまで徹底的に話し合い、ヒートアップしているのであって、決して罵り合っているわけではありません。

傾向として、外国人社員に何かを指摘をした際、はじめに「自分がどれだけやっているか」を自己主張するところがあります。「まずは謝ること」が正攻法になっている日本人からすると言い訳に聞こえることもありますが、外国人社員を抱えている場合、まずは部下の意見を受け止めて、そこから議論出来るリーダーが必要です。

もちろん、明らかに叱るべきことをしていたら怒るときもあります。そういう時に良いと思うのは、外国人の社員はオンオフがはっきりしているので仕事で叱られても全く引きずらないという面があります。マネジメントする立場からすると伝え易いと思います。

お互いが納得できるまで評価面談

神 人事制度など工夫していることはありますか?

牧氏 外国人社員は日本人の国内帰省のように度々帰省するわけにはいかないので、長期の休みが必要な時もありますが、制度面で対応しています。評価については、マネジメントサイドの社員は100%が成果評価ですが、若年層社員の評価構成は成果評価が60%、積極性・協調性等のポテンシャルとスキルによる評価で40%の構成としています。

日本人と違うのは、外国人社員同士で評価や給料などはオープンに話すため、「私よりこの人の方が評価・給料が高い」など筒抜けであることが多いです。ですから、ポテンシャルやスキルという数字表現が難しい評価は「なぜこの評価なのか」理由を明確にし、互いが納得できるまで評価面談をします。

外国人同士だからこそ生じる課題もある

神 今後の課題があれば教えてください。

牧氏 外国人同士が故の「ライバル心」「プライド」が課題になる時があります。例えば、会議中に日本語のあるワードが理解できなくても「わかっているフリ」をする社員が多いです。

同じ外国人同士でいる時に「日本語が分からない」と言うのは恥ずかしいとの事ですが、会議等で意図が伝わらない方が困りますから、その場で質問や確認するように指導し続けました。現状、こちらから確認すれば「わからないので教えてください」と言えるようになりましたが、自ら確認することはまだできていません。

他にも、上司から指摘を受けたことを同僚に共有してくれると良いと感じますが、なかなかそういった「ノウハウ共有」は自発的にしてもらえません。なので、「この情報をメンバーに共有してください」という指示をするようにしています。また、今後のステップアップを考えると、日本語は上手でも敬語が苦手な人が多いです。

私は社内で敬語が出来なくてもあまり気にはなりませんが、これから社外に出るような職種、例えば法人営業やコンサルティングをやりたいといった場合には日本語をステップアップしてもらう必要があります。現状では社内の仕事に従事してもらっていますので、日本語のスキルアップについては個々の努力に任せています。

「外国人だから」ではなく、本人の「頑張りたい気持ち」をサポートする

 これから外国人材の雇用を推進していきたい企業へアドバイスをお願いします。

牧氏 日本人と外国人を分けずに、同じものを求め、同じ対応をするべきだと思います。日本で外国人として働く本人は、日本人ビジネスマンと比較してマイナススタートだと自覚している人が多いです。ですから「日本文化を理解して日本人と同じようにやれるよう頑張りたい」という本人の気持ちを理解した上で対応すれば、それに応えて成長してくれるはずです。

外国人は「空気を読まない」や「個人主義でわがまま」と言う方もいますが、日本人の中にもそういう方はいます。外国人だからということより、事業の理解や共感と言ったところにエンゲージリングできれば日本人と同じように、むしろそれ以上に頑張ってくれる外国人も多いと思います。

20年後に選ばれる会社になるために今から外国人採用と文化創りを

 そうは言っても外国人社員の受け入れに消極的でなかなか進まない‥そんな悩める企業・担当者にメッセージをお願いします。

牧氏 日本の会社は400万社あり、日本人のどんどん減る就業人口の中で「優秀な日本人だけを集めたい」というのは無理な話です。仮に苦労して採用したとしても売り手市場ですから2.3年で転職する可能性が高いです。会社の10年後20年後を考えるのであれば、外国人を採用するのは必然であり、もし外国人採用を足踏みしているのであれば、決意をもって変えなければいけません。

将来、さらに外国人人口の比率が高くなる中で、今採用した20代の外国人が部長になり、役員になったとしたら、それは良いロールモデルになります。たとえ現状で外国人は必要ないという会社であっても、10年後20年後に人材を十分に集める会社になるためには、今から外国人社員を採用して育成する必要があります。

さらに言えば、外国人の親を持つ子供たちが今の日本には沢山います。その子供たちが就職するときに魅力的な会社、選ばれる会社になるためにも必要な取り組みです。

もちろん、日本人の採用・育成とは違った壁や困難はあると思いますが、今から積極的に外国人を登用し一緒に働く文化と成果を創っていかなければいけません。会社の文化の変革や育成は一朝一夕で創れるものではなく経験と時間でしか創れないものですから。

「中国語圏出身の者同士でも、日本語で話すようにしています。周りの人が何を話しているのか分からないのは失礼だと思いましたし、自分の日本語能力の向上にもその方が良いと考えています。」(社員Rさん談)

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ABOUTこの記事をかいた人

株式会社グローバルパワー GHR事業本部所属 東京都生まれ。日本女子大学を卒業後、大手ゼネコンを経て、2016年グローバルパワーに入社。趣味はGoogle Mapsを辿ること。ペーパー1級建築士。