2019年4月に当サイトで、働く外国人が増えた理由は?~企業が外国人を雇用する4つの理由~という記事を掲載しましたが、2019年6月頃から急に記事の閲覧数が増加しました。2019年4月に、単純労働領域における外国人労働者の受け入れ「特定技能」の在留資格が新設され、大きなニュースになりましたので、おそらく「なぜ外国人労働者が増えているのか?」「なぜ、日本に住む外国人が増えたのか?」という疑問をもった方が増えたのかもしれません。
そんな「なぜ?」の需要におこたえして、今回は、政治・社会的な背景などのマクロな視点で、なぜ日本に住む外国人が増えたのか?その背景と理由についてご紹介します。
■目次
1.日本政府の方針(社会の要請)意図的増加
日本に住む外国人が増えた理由は、大きく分けて2つの要因があり、1つは日本政府の方針による意図的な増加と、もう1つは自然発生的な増加です。まずは、日本政府の方針による意図的な増加要因の代表的なものをご紹介します。
1-1.外国人留学生の増加 留学生30万人計画
現在、日本に在住する外国人留学生は、337,000人(2018年12月末時点)ですが、この外国人留学生は、日本政府が意図的に増やすべくして増加した結果となります。
1983年に、中曽根康弘首相の掛け声で、21世紀の初頭までに留学生受け入れ数を10万人にするという『留学生10万人計画』が策定・発表されました。それ以来、日本の国費による外国人留学生が増え、国費留学生は年々増加し、経済成長にともない、あわせて私費留学も増加しました。
そして、2008年には福田康夫首相のもと「日本を世界に開かれた国とし、人の流れを拡大、2020年に日本国内の外国人留学生を30万人に増やす」として『留学生30万人計画』が策定されました。
(出典:平成30年度 外国人留学生在籍状況調査結 JASSO)
日本で学ぶ外国人留学生は、留学生30万人計画のもと順調に伸長し2018年12月末時点で337,000人を記録、前倒して30万人計画の目標が達成されました。外国人留学生は、アジア地域からの留学生が93.4%、欧州・北米地域からの留学生が4.5%です。外国人留学生33万人のうち、日本の国費で留学を支援する「国費留学生」は、全体の約3%となります。
なぜ、わざわざ日本の国費を使ってまで、外国人留学生を増やす必要があるのでしょうか。それは、日本の未来のためです。
日本の国費で留学できる人材は、もちろん政府が厳選しますので、学力が高く優秀な人材に限られます。学力が高く優秀な人材は、日本の大学を卒業した後は母国に戻り政府機関等で活躍をします。日本の国費で勉強をするチャンスを得た優秀な人材は「親日派」として、政財官学界に影響を及ぼし、外交にも有効に機能することが期待されます。
また、国費・私費ともに、日本に留学をして日本語をができるようになった人材は、なにかしら母国との懸け橋になるような活動をする傾向があります。母国とのビジネスや国際協力関係への発展が期待でき、日本の経済界にもプラスになると言えるでしょう。
1-2.技能実習生の増加 国際貢献(労働力不足解消?)
技能実習制度とは、1960年代後半頃から海外の現地法人などの社員教育として行われていた研修制度が評価され、1993年に制度化された制度です。その制度を利用して来日した外国人は「技能実習」という在留資格をもち日本で活動をします。
技能実習制度の目的・趣旨は、技能実習生が日本で培った技能・技術・知識を母国にもちかえり技術移転、開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与するという、国際協力の推進、国際貢献を目的としています。
日本政府が社会の要請にこたえる形で、在留資格「技能実習生」が創設され、この制度を利用して東南アジアを中心とした開発途上地域の多くの外国人の方々が、日本の技術を学ぶために来日しました。
2018年12月末の最新データによると、技能実習生は328,360人と過去最高値となっており、日本で働く外国人(パート等のアルバイトを含む)の約20%を占め、主に、農業・漁業・建設関係・製造業において制度が利用されています。
(出展:外国人技能実習制度の現状、課題等について 厚生労働省)
「数ある先進国のなかで、なぜ日本へ?」という疑問に関しては、アジアの中でもっとも近くにある先進国であり、技術大国であるという点と、開発途上国である母国との賃金格差があるため「稼ぐ」目的としてもちょうど良い点、そして日本政府の「技能実習制度」による後押しもあり増加の一途をたどったと推測されます。
ただ近年は、技能実習制度を国際貢献・技術移転の目的とせず、労働力の需給調整の手段として使われる傾向がつよく、低賃金での雇用や劣悪な環境での技能実習生の受け入れが社会問題となっています。
その問題を解決すべく、次にご紹介する新在留資格「特定技能」が創設されました。
1-3.新在留資格「特定技能」の新設 労働力不足解消
技能実習制度の社会問題をうけ、2019年4月に入管法改正で、農業・漁業・建設関係・製造業・宿泊業など一部の単純労働における外国人雇用が解禁、在留資格「特定技能」が新設されました。
この在留資格「特定技能」において、直近5年で約34万人の働く外国人の増加が見込まれてます。技能実習生が2018年12月末で32万人になりますので、5年で技能実習生の在日数に追いつく計算になりますが、在留資格「特定技能」は、受け入れ企業のコスト負担が日本人の雇用以上に大きくなる設計になっていますので、予定どおりに増加するかどうかは、なんとも言えない状況です。
日本経済新聞の報道(2019年8月2日)によると、2019年7月末時点で特定技能1号の取得者は44人で、農業や製造業に従事しているとのことです。
この在留資格「特定技能」は、日本政府がはじめて単純労働領域において就労できる在留資格を創設し、外国人の労働を解禁をしました。少子高齢化で人手不足による産業界の要請をうけ、外国人労働者が出稼ぎ目的で正々堂々と来日できるようしたかたちにになります。
(※上記以外にもワーキングホリデーなど外国人が増加する政策はありますが、インパクトが大きいものだけご紹介しました。)
2.国際化にともなう 自然発生的増加
日本に住む外国人が増えた理由、もう1つの理由と背景は自然発生的な増加です。グローバル化で海外との交流が増える、上記の政策で日本国内に外国人が増える、と自然に増えていくような属性になります。具体的にご紹介していきます。
2-1.国際結婚の増加
国際化にともない、日本人が海外留学・海外就職・海外赴任・海外出張等をする機会が増える、また、留学生30万人計画等で、日本在住の外国人が増えると、日本人と外国人の接点が増えます。日本人と外国人の接点が増えると、一定数が結婚までに至るのは想像に難しくありません。
外国人が日本人と結婚をした場合、「配偶者」という在留資格をえて日本に在住しますが、その在留資格「配偶者」の取得者数の推移が下記です。2018年12月末のデータによると、14万人強の外国人が日本人と結婚していることになります。
日本人と結婚する在留資格「配偶者」は、外国人留学生や技能実習生と違い、年々増加ではなく波があります。国際化にともない外国人と日本人の接点は年々増えているはずではありますが、男女の相性は、単純に「右肩あがり」とはいかない点が面白いところです。
2-2.技術・人文知識・国際業務の増加
近年、日本企業の国際化にともない、海外とのコミュニケーションが必要になり、語学堪能な人材の採用需要が増えました。また、IT技術の普及にともない、技術者の採用需要も増えました。そのような背景から増加したのが、語学力や技術力を活かして仕事をする外国人です。オフィスワーク系で勤務している外国人ビジネスパーソンの多くは、語学力・技術力を活かす仕事で、在留資格は「技術・人文知識・国際業務」となります。外国人留学生が日本の企業に就職した場合、約90%がこの在留資格に変更し就労します。
(出典:高度外国人材の受入れ・就労状況 法務省・厚生労働省・経済産業省)
上記は、少々見づらいグラフになりますが、黄緑色の部分が語学力や技術力を活かして仕事をする「技術・人文知識・国際業務」という在留資格を保有している外国人の数の推移です。年々増加し、2018年12月末の最新データでは225,724人でした。
企業の国際化にともなう人材需要とともに日本企業で働く外国人が増えますし、外国人留学生が増加すれば、日本企業に就職する外国人が増える、ということから、意図的でもあり自然発生的でもある、外国人の増加要因です。また、周囲で働く外国人が増えれば増えるほど、日本企業が外国人雇用に慣れてきますので心理的なハードルもさがり、より日本企業に雇用される外国人が増える可能性が広がると言えるのではないでしょうか。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」として日本に住む外国人の配偶者(外国籍)や子は「家族滞在」という在留資格で日本に滞在しています。日本企業で働く外国人が増加するとともに、その外国人家族らもあわせて増える事になります。
日本企業が外国人を雇用する動機をくわしく知りたい方は、記事:働く外国人が増えた理由は?~企業が外国人を雇用する4つの理由~をご確認ください。
2-3.永住者の増加
日本に住む外国人の在留資格のなかで、もっとも多い在留資格が「永住者」です。2018年12月末時点で771,568人と年々増加、過去最高値を記録しています。永住者とは、ほかの在留資格と違い、活動内容に制限がなく(起業をしても、風俗で勤務をしても、無職でも構いません)在留期間に制限がありません。
(出典:永住者の在留資格について 平成30年9月 法務省入国管理局)
永住者の在留資格が取れる条件は下記です。
①10年以上継続して在留していること(うち5年は就労資格又は居住資格で在留していること)
② 納税義務等公的義務を履行していること
③最長の在留期間(3年・5年)を所持していること
④公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと
したがって、日本で働く外国人や日本人と結婚する外国人が増えれば増えるほど永住者も自然発生的に増加します。
【よくきかれる質問・補足】特別永住者は、第2次世界大戦終戦前から引き続き居住している在日韓国人・朝鮮人・台湾人およびその子孫の在留資格の事で、ここで言う永住者とは違います。また、永住者は日本国籍を取得した者ではありません。外国籍をもったまま、日本に永住できる権利をもった者です。日本国籍を取得した者は「帰化」と言い、以後、外国人ではなく日本人として生活をします。
3.日本に住む外国人が増える理由のまとめ
「なぜ日本に住む外国人が増えるのか?」というテーマで、今回は、政治・社会的な背景などのマクロな視点で解説しました。日本に住む外国人が増える理由は、日本政府による意図的な増加とグローバル化による自然発生的な増加の2つの要因がありました。解釈については様々なご意見はあるかと思いますが、筆者個人の独断で大きく分類しましたことをご容赦いただければと思います
・日本政府の方針による意図的増加とグローバル化による自然発生的な増加がある。
・留学生の増加は『留学生10万人計画』『留学生30万人計画』によるもの
・国際貢献を目的とした技能実習生制度により、外国人技能実習生の増加
・外国人労働者の単純労働を許可する「特定技能」の新設(2019年4月)未知数
・国際化で外国人との接点が増えるとともに増える国際結婚
・日本企業の国際化・IT化にともなう、語学力・技術力人材の需要
・日本で働く外国人が増えると同時にその家族も増加
・日本に住む外国人の滞在年月が増えるとともに増加する永住者
まだまだ、ご紹介したい政策や背景がありますが、今回はインパクトが大きいものだけをご紹介しました。また機会があれば記事でご紹介したいと思います。
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