特定活動46号・本邦卒業者 在留資格 徹底解説~知らないと損!外国人留学生の就職先 転職先 拡大 規制緩和 ~

※この記事は、法務省「留学生の就職支援に係る「特定活動」(本邦大学卒業者)についてのガイドライン」の発表内容により、最新の情報に書きかえております(2019年6月4日)

2019年5月30日に、外国人留学生の就職先を拡大すべく新制度・特定活動(46号/本邦大学卒業者)が公布決定された事をご存知ですか。2019年4月に「特定技能」の入管法改正で、一部の単純労働における外国人雇用が解禁となりましたが、外国人留学生の就職先の業務領域の拡大においてはあまりニュースになっていません。

この新制度は、日本企業にとって外国人雇用の選択肢が拡大するとともに、次世代を担う幹部候補・後継者候補の採用戦略としても有効です。「特定技能で対象の14業種に入らなかった!」と悔しい思いをされている経営者・人事の方は必見です!

さっそく新制度について、わかりやすく徹底解説していきたいと思います。

1.規制緩和・新「特定活動(46号・本邦大学卒業者)」とは? 外国人留学生の就職先拡大

これまでは、外国人留学生が日本企業に就職しようと思った場合、外国人ならではの感性や語学力を活かすような業務、または技術力を活かすような仕事でしか在留資格(就労ビザ)の許可がおりず、労使の合意と強い希望があったとしても就職をすることができませんでした。

しかし、今回の新制度では、「フルタイム」「日本の大学を卒業・大学院を修了」「日本語能力試験N1またはBJTテスト480点以上」「日本人と同等以上の報酬額で雇用される」「日本語を用いたコミュニケーションを必要とする業務」「大学で学んだことを活かせる仕事」であれば、これまで、就職がみとめられなかった、製造業等の現場勤務や飲食店、スーパー、コンビニエンスストアなどのサービス業の現場での就職が可能になります。

また、労働力不足を補うための「特定技能」と異なり、雇用が成立し、在留資格の更新手続きをする限り、上限なく日本で働き続ける事が可能な為、将来の幹部や後継者としての育成も期待できます。

「特定活動」という在留資格は、ワーキングホリデー、インターンシップ、EPA、医療滞在、日系人4世など、活動内容が約40種類あります(2019年4月現在)。今回は、46種類目の「46号 特定活動」として追加されました。47号は、46号の特定活動取得者の配偶者や子が在留するための特定活動になります。

法務省が出している趣旨・概要は下記になります。(次項で、わかりやすく解説します)

PDFで上記資料をダウンロードしたい方はこちら→ 特定活動 留学生の就職先拡大について(法務省)
より詳細な資料が必要な方はこちら→留学生の就職支援に係る特定活動本邦大学卒業者についてのガイドライン.pdf

2.「特定活動(本邦大学卒業者)」在留資格がおりる条件は?くわしい解説

今回の新制度の特定活動で在留資格の許可がおりる条件は何でしょうか?

①フルタイム(常勤)での雇用であること

フルタイム(常勤)の雇用で、いわゆる、正社員・契約社員などが対象になります。フルタイムであっても派遣社員は、対象外です。アルバイト・パートも対象になりません。

②日本の大学、日本の大学院を卒業・修了し学位を授与されていること

日本の大学を卒業、または日本の大学院を修了し学位を保有することが条件です。日本の大学でも中退、学位はあるが海外大学を卒業したのみ、日本の短期大学、日本の専門学校卒業の外国人は対象になりません。

日本の大学、大学院の学位をもたない外国人を雇用したい場合は、これまでどおり、語学力や技術力を活かす在留資格「技術・人文知識・国際業務」もしくは、2019年4月に新設された「特定技能」の在留資格に変更していくことを考えた方が良いでしょう。

③日本語能力試験N1またはBJTビジネス日本語能力テストが480点以上であること

日本語能力をはかる代表的な試験である、日本語能力試験(JLPT)がN1、またはBJTビジネス日本語能力テストが480点以上を有する方が対象です。海外(母国)の大学・大学院で「日本語」を専攻して卒業した方は、上記の日本語能力があるものとしてみなされます。

最も受験者数が多く圧倒的な知名度を誇り、日本企業の採用基準目安として活用されている試験が、日本語能力試験(JLPT)です。また、ビジネスにおける日本語能力を測るビジネスパーソン向けのテストがBJTビジネス日本語能力テストです。

日本語能力試験(JLPT)のレベルは、N5~N1で構成されており、N1は最も難しいレベルになります。中国や韓国などの漢字圏出身者はN1取得者が多く、欧米や東南アジアなどの非漢字圏出身者のN1取得者は少数です。

BJTビジネス日本語能力テストは、J5~J1+までの構成で、J1+が最も高いレベルになります。 今回の基準である480点以上とは、下記の「J2」以上で、かつ480点以上のスコアを獲得している事が必要です。

日本語能力試験とBJTビジネス日本語テストの比較表は下記です。

雇用を検討している外国人が、これらのテストを受験していない場合は、早めに受験をするように勧めると良いでしょう。日本語能力試験は年に2回しか実施されませんが、BJTビジネス日本語能力テストは、いつでも受験をすることができます。

④日本人と同等額以上の報酬であること

雇用条件が、日本人と同等額以上の報酬である必要があります。昇給面を含め、日本人大卒者・院卒者の賃金を参考にされます。また、地域や個々の企業の賃金体系や、他の企業の同種の業務に従事する者の賃金、母国で実務経験を積んでいる場合は、その経験に応じた報酬が支払われているかどうかという事も参考にされる様です。

⑤日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務であること

入社後の配属先の仕事が、受動的な作業を行うだえの業務ではなく、「翻訳・通訳」の要素がある業務や、日本語を使って他者との双方向のコミュニケーションをする業務である必要があります。具体的な業務はのちほどご紹介します。

⑥日本の大学や大学院で修得した広い知識及び応用的能力等を活用するもの

従事しようとする業務内容に「技術・人文知識・国際業務」(語学力や技術力を必要とする業務)の対象となる学術上の素養当を背景とする業務が一定水準以上含まれている事、または将来的にそのような業務に従事することが見込まれる事が必要です。

学校教育法の第83条第1項に「大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする。」とあります。大学の学位があるというこは、応用力があるという前提ですので、仕事内容と学部・専攻に関しての強い関連性を求められることはないと想定されます。

3.具体的にどのような仕事であれば「特定活動(本邦大学卒業者)」が許可されるのか。

具体的に、下記のような仕事であれば許可がおります。

・ 飲食店の店舗において、外国人客に対する通訳を兼ねた接客業や日本人客に対しても接客を行う。( 厨房での皿洗いや清掃にのみ従事することは認められません)

・工場のラインにおいて、日本人従業員から受けた作業指示を技能実習生や他の外国人従業員に対し外国語で伝達・指導しつつ、自らもラインに入って業務を行うもの。(ラインで指示された作業にのみ従事することは認められません。)

・小売店において、仕入れや商品企画等と併せ、通訳を兼ねた外国人客に対する接客販売業務を行う。併せて、日本人客に対する接客販売業務も行う。( 商品の陳列や店舗の清掃にのみ従事することは認められません。)

・ホテルや旅館において、外国語によるホームページの開設・更新作業、外国人客への通訳・案内、他の外国人従業員への指導を兼ねたベルスタッフやドアマンとして接客、それに併せて日本人客に対する接客を行うことを含む。(客室の清掃にのみ従事することは認められません。)

・タクシー会社で、観光客(集客)のための企画・立案を行いつつ、自ら通訳を兼ねた観光案内を行うタクシードライバーとして活動するもの。それに併せて、通常のタクシードライバーとして乗務することを含む。(車両の整備や清掃のみに従事することは認められません。)

・介護施設において、外国人従業員や技能実習生への指導を行いながら、外国人利用者を含む利用者との間の意思疎通を図り、介護業務に従事するもの。 (施設内の清掃や衣服の洗濯のみに従事することは認められません。)

「単純労働のみ」で従事することは認められていませんが、日本語でコミュニケーションを双方向でとる仕事をしながら、一部で単純な作業を行うことが認められています。

4.特定技能、技能実習、技術・人文知識・国際業務との違いは?

では、2019年4月に新設された「特定技能」と、これまでの在留資格「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格との違いは何でしょうか。

下記の表をご覧ください。2019年5月下旬に告示予定の新しい在留資格「特定活動(46号/本邦大学卒業者)」は下記の赤枠となります。(※下記は、現段階での情報にもとづくもので変更になる可能性があります)

【参考資料】
技能実習生の対象職種
特定技能の概要と対象14業種
技術・人文知識・国際業務とは?

上記の表にあるように、2019年4月に新設された「特定技能」については、単純労働の領域で14業種に絞られているのに対し、今回の「特定活動(本邦大学卒業者)」については、特に業種・職種の指定がありません。

したがって、人手不足であるスーパーやコンビニエンスストアなどの接客販売業、運輸・倉庫業、製造業等において、日本人の雇用と同じように「外国人雇用のチャンスがある」という事です。

学生時代にアルバイトとして活躍してくれた、外国人留学生をそのまま正社員として雇用することが可能です。

慢性的な労働力不足にもかかわらず、特定技能14業種の対象にならず悔しい思いをされた、業種・職種の企業にとって、この特定活動による外国人留学生の就職拡大の規制緩和は朗報ですね!

1つ注意点が、特定活動46号の取得者が、転職をする際は、新たな「在留資格変更許可申請」が必要です。

5.特定活動(46号/本邦大学卒業者)での外国人雇用のメリットは?

「特定活動 (本邦大学卒業者)」での外国人留学生や外国人社会人の雇用のメリットは下記です。

①日本の文化や商習慣、日本式コミュニケーション方法を理解している

特定活動の在留資格の許可要件に「日本の大学を卒業、または日本の大学院を修了」とありますので、編入などの事情がなければ「少なくとも日本国内で4年以上は在留し生活をしている」という事になります。外国人留学生の大半が、大学進学の前に日本語学校にも2年間通っていますので、平均して6年は在留していると想定されます。4年以上、日本で生活をしていれば、日本の文化を理解し日本式コミュニケーショとンも上手にできるようになっているでしょう。また、日本企業でアルバイトなどをしていれば、日本の商習慣もある程度理解している可能性が高いと思って良いでしょう。

②通常どおりの採用活動と雇用管理で良い。特別な事はしなくても良い。

「特定活動」での採用・雇用を検討する場合は、通常どおりの採用活動・雇用管理で問題ありません。日本人を採用する際に利用する、求人媒体やハローワーク、人材派遣・人材紹介会社などを通じて人材を確保することが可能です。また、雇用後も、登録支援機関や監理団体などの支援を受ける必要はありません。

単純労働領域である「特定技能」については、受け入れに伴い、「支援計画の立案と実施(事前ガイダンス、入出国の送迎、住居確保や生活に必要な契約の支援、生活オリエンテーション、公的手続き同行、日本語学習の機会提供、苦情相談対応)」が必要です。(登録支援機関への一部委託も可能) 毎月、従業員の給料明細等を定期報告するなどの労務コストがかかり、実際は日本人の雇用以上に管理コストがかかると言われています。その点、「特定活動」は、通常の人事オペレーションで、追加コストは発生せずに雇用管理できるところが魅力です。

③次世代を担う、幹部候補・後継者候補としての育成対象となる

「特定活動」は、雇用が維持される限り在留資格の更新が可能です。技能実習や特定技能1号のように、在留期限に上限があり帰国をする必要がありません。したがって、いずれ帰国をしてしまうという、いち労働力としての雇用ではなく、企業の次世代をになう幹部候補・後継者候補として育成する人材の対象としての雇用が可能です。

6.まとめ 外国人雇用機会の拡大、徹底解説「特定活動46号/本邦大学卒業者」

「特定活動(本邦大学卒業者)」の新設により、どの業種・職種においても、外国人の雇用チャンスが生まれる事について、ご理解いただけましたでしょうか。

・在留資格「特定活動(46号/本邦大学卒業者)」で外国人留学生の就職が拡大する。(2019年5月30日告示)
・在留資格の許可要件は、「フルタイム」「日本の大学を卒業・大学院を修了」「日本語能力試験N1またはBJTテスト480点以上」「日本人と同等以上の報酬額で雇用される」「日本語を用いたコミュニケーションを必要とする業務」「大学で学んだことを活かせる仕事」。
・「特定技能」の14業種の対象外となった業種・職種は、特に外国人雇用のチャンス!
・特定活動は通常の採用・雇用オペレーションで受け入れ可能
・在留資格が更新できるため、日本人と同様に幹部候補としての育成が可能

ぜひ、この機会に外国人雇用の拡大を検討してみてはいいかがでしょうか?

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ABOUTこの記事をかいた人

株式会社グローバルパワー 取締役 1979年 山口県生まれ。広島県の呉大学(現:広島文化学園大学)社会環境情報学部を卒業。大手人材サービス会社の営業を経て、2010年 外国人派遣・紹介サービスの(株)グローバルパワーに入社、2012年 取締役に就任。2017年 外国人雇用とマネジメントのすべてがわかるWEBサイト「グローバルパワーユニバーシテイ」編集長。