株式会社ビィ・フォアード
末盛 貴弘 氏
取締役
ゼネラルマネージャー
大島 亜也奈 氏
社長室
秘書 兼 広報
会社プロフィール
設立:2004年3月
従業員数:約210名
外国人社員数:約60名
迅速な決断①80%を超えるリモートワーク化
利重 リモートワークに移行した現状を教えていただけますか。
末盛氏 リモートワークを開始したのは、最初の緊急事態宣言が出る前の2020年3月です。決して広くはないオフィスで200名の社員が仕事をしていたので、社内感染の懸念がありました。また、通勤中の感染リスクも考えると、早々にリモートワークに切り替えたほうがいいと判断しました。
大島氏 現在、従業員は約200名で、そのうち約60名が外国人です。リモートワークの割合は全体では80%超ですが、外国人スタッフのリモートワーク率は100%です。末盛は毎日出社していますが、役員も基本はリモートワークで、物流の担当役員は週2日、他の3名の役員は完全にリモートワークです。
利重 それ以前は、制度としてリモートワークという働き方はなかったと思いますが、スタッフのみなさんの反応はいかがでしたか。
末盛氏 初めてのことだったうえに急な転換だったので、最初は「難しいのでは」という意見もありました。ただ、思い切って導入してみたら、「なんとかなったね」という感じです。オフィスで仕事をしていた頃から、海外の取引先とはオンラインを活用してやりとりをしていました。そのため、リモートワークに移行しやすかったのだと思います。
自宅にオフィスと同じシステム環境を整え、独自システムで仕事を共有
利重 自宅にインターネット環境が整っていないスタッフへの対応はどうされたのですか?
末盛氏 Wi-Fiを配り、通信環境は早々に改善してもらいました。また、スタッフの自宅にオフィスと同じシステム環境を用意しました。自宅にパソコンがない場合はもちろんですが、あったとしてもノートパソコンでは仕事の効率が落ちます。
会社ではデスクトップパスコン、ツインモニターを使って仕事をしていたので、各スタッフにはデスクトップパソコンとモニターを2台ずつ提供しています。そのため、仕事の効率が落ちることはありませんでした。
利重 リモートワークのデメリットとして、社員の管理が難しいという声をよく耳にします。常にオンラインでつないでいるという企業もあるようですが、御社ではどのような工夫をされていますか。
末盛氏 リモートワークになってから導入したツールは会議用のZoomくらいで、特別なことはしていません。当社はもともと全社員が会社の独自システムで仕事をしています。そのシステムを見れば、誰がどのような仕事をしていて、どれくらい進んでいるのかなど進捗状況がわかります。
また、コロナ禍にあたって、会社全体でルールを設けたということもありません。スタッフに任せているので、各部署単位ではマネージャーたちが工夫しています。
大島氏 私が所属する社長室では、その日の仕事内容を簡単に書いた日報を提出して、全員で共有するようになりました。また、新しいスタッフへの引き継ぎの際に、必要な日数だけZoomをつなぎっぱなしにして、業務の説明をしたチームもあります。
利重 対面だとジェスチャーなど雰囲気で言葉が伝わりやすくなると思いますが、リモートワークではそれが難しい。特に外国人スタッフが日本語で意向を伝えるのは難しくて困っているという話を聞きます。
末盛氏 その点では当社は問題ありません。もともと日本語が話せない外国人スタッフが大勢いるし、マネージャー陣はほぼ英語が話せます。普段から英語でやりとりし、コミュニケーションもうまくとれていました。実務面でリモートワークゆえの支障はほぼないと思います。
(新型コロナウィルス感染症拡大前、オフィス解約前の同社)
迅速な決断②オフィスを解約して規模を縮小
利重 非常にスムーズにリモートワークに移行できた印象ですが、システム環境が整ったとしても、小さなお子さんがいたり、集中できるスペースがなかったり、会社に出社したいという人もいたのでは?
末盛氏 たしかに慣れるまでは大変だったと思いますが、出社したくても、すでにオフィスはありません。
大島氏 昨年(2020年)の10月末にオフィスの契約は解除して、小さなオフィスに移転しました。そのため、今はスタッフ一人ひとりの机は無くなってしまいました。
末盛氏 半年前には管理会社に解約の申し入れをしなくてはいけないので、リモートワークに切り替えたのと同時に、オフィスを縮小する決断をしました。
利重 ずいぶん早い段階での決断だったのですね。リモートワークになりあまりオフィスを利用していなくても、なかなか解約に踏み切れない企業は多いと思います。
末盛氏 世界中でロックダウンが始まったり、日本でも緊急事態宣言が発令されたり、事業への打撃は予想できたので、経費の削減は急務でした。オフィスの維持費は経費の中でも割合が高い。そこを削減できれば大きいですからね。そういう意味では、リモートワークに移行しての最大のメリットはオフィスを解約して経費を削減できたことかもしれません。
リアルな対話は必要。コミュニケーションスペースの新設
利重 スタッフの方々はリモートワークになったことでのプラスをどう感じていますか?
大島氏 私自身もそうですが、通勤の負担がなくなったことは、大多数のスタッフにとってプラスだったようです。満員電車のストレスからの解放や、ジムに通うなど自分時間が充実したという声も聞きます。その一方で、週一くらいの頻度でオフィスに通いたいという意見は当初からあります。
末盛氏 特に外国人スタッフは一人暮らしが多いので、一日中誰とも口をきかずにパソコンに向かって仕事をしていると寂しくなってくるのでしょう。実際に、それが原因で国に帰ってしまったスタッフもいます。近所づきあいがなく、会社にしかコミュニティーがないスタッフが、そこを断たれてしまうと辛いと思います。
大島氏 もともと当社はスタッフ同士の仲が良くて、仕事帰りやプライベートでもよく食事をしたりしていました。私自身は週に一度はオフィスに行っているので、今でもスタッフとの交流はあるほうです。それがぱったりなくなってしまったら、やはり寂しいですよね。
利重 スタッフ同士のコミュニケーションについて、今後何か対策は考えていますか?
大島氏 はい。少しずつ社員同士や取引先の方々と直接会う機会を作っていこうということで、六本木にオフィスを作りました。オフィスといっても全員が出社するのではなく、、コミュニケーションスペースといった感じです。
社員全員が集まることはできませんが、40名くらいが入れるスペースです。チームごとに集まってミーティングをしたり、自宅ではない場所で仕事がしたくなった社員がワークスペースとして使ったり、スタッフが自由に利用できる場所になればと思っています。ここは8月から稼働しています。
迅速な決断③ 販売台数ではなく業務の効率化による利益率アップに方針転換
利重 差し支えなければ、コロナ禍での業績を教えていただけますか。
末盛氏 最初はガクンと落ちました。当社は6月決算なのですが、昨年はひどいものでした。そこから少しずつ持ち直して、今年は過去最高の業績アップになりました。
利重 要因は何だったのでしょうか?
末盛氏 さまざまな要因があったと思います。コロナの影響を受けて、最初は明らかな業績ダウンだったので、まずは大幅に経費を削減する必要がありました。オフィスを解約したのもその一つですが、他にも切り詰めた部分は多々あります。
同時に事業についての対策を考えた時、これまでのような薄利多売では生き残ってはいけないと感じました。その方法では人も場所も必要になり、経費がかさむからです。そこで、販売台数を追求するのではなく、業務の効率を高めて1つ1つの商談で利益率を上げる方針に切り替えました。結果的に、販売台数は落ちましたが、利益はしっかりと出ています。
利重 なるほど、営業方針の転換を含め、リモートワークへの移行やオフィスの縮小など、迅速な対応が業績アップにつながったのですね。
ビヨンドコロナの働き方、働き方の多様性を視野に
利重 最後に今後、働き方はどう変わっていくと思いますか。リモートワークが当たり前になっていくのでしょうか。
末盛氏 私は現状がベストとは思っていませんし、コロナが収束すれば働き方も変わってくるでしょう。可能性として、当社もまたオフィスを構えることがあるかもしれません。ただ、以前のように全員が出社するという働き方に戻るのかというと、それも違うと思います。
会社の観点で見るならば、スタッフ全員の机があるような大きなオフィスを構えることは、経費面でのリスクがあります。すでにリモートワークが可能であることは実証されているので、負担にならない程度の規模でオフィスを構え、交代で出社するといった感じになるのではないでしょうか。または従業員の観点からも、出社したい人は出社する、リモートワークがいい人はそうするなど、働き方の選択肢が広がっていくかもしれません。
大島氏 スタッフ同士のコミュニケーションを考えると、一堂に会せずともやはり直接会う機会や場所、一緒に仕事ができるスペースは必須だと思います。リモートワークになってから入社したスタッフもいますが、所属チームとの接触しかなく、まだ会ったことのない社員もいます。
末盛氏 やはり、どこかに所属しているという意識は必要です。そのためには、同じ空間にいる環境も重要になります。リモートワークでは帰属意識はなかなか身につきません。そういったコミュニケーションの視点も考慮しながら、今後は働き方の多様化を視野に入れる必要があると思います。