毎年、法務省から「在留外国人統計(旧登録外国人統計)統計表」というものが発表されます。在留外国人統計とはどのような統計かというと、日本在住の外国人材の人数や居住エリアなどをまとめたものになります。毎年この統計を楽しみにしており、「どの国籍の方の在留が伸びたのか?」「昨対でどのくらい伸びたのか?」など肌感覚と実際の数値を付け合わせて、自分の予測が合っているかどうか、などを楽しんでいます。なんともマニアックな話ではありますが、職業病みたいなものかもしれません。今回は、在留外国人統計と採用活動への活かし方についてのお話をしたいと思います。
※下記の数値は、2016年末日の確定数値をもとに集計した数値です。2017年の最新統計は2018年3月に法務省より発表される予定です。(出典:http://www.moj.go.jp/housei/toukei/toukei_ichiran_touroku.html)
日本在住の外国人は、約238万人
2016年末日時点で、日本在住の外国人材の総数は、2,382,822人・国籍は196ヶ国(+無国籍)で過去最高となります。※2017年6月時点で約247万人
1980年代から、じわじわと在留外国人が増えはじめ、2008年に約221万人にまで増加しました。しかし、2008年後半のリーマンショックをきっかけに減少、2011年の東日本大震災と原発事故の影響で、2012年には約203万人にまで減少しました。その後、訪日外国人観光客(インバウンド)の増加とともに在留外国人も増え、2016年12月末で過去最高の約238万人を記録しました。
エリア別で見てみましょう。
エリア別でみてみると、アジア圏が全体の83%を占め、続いて南米10%、ヨーロッパ3%、北米3%、オセアニア、アフリカの順となっています。
最近、教育機関や教育関連の民間企業で英語ネイテイブ人材を採用したい企業が増えていますが、いわゆる英語ネイティブだと言われている6ヶ国(アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、アイルランド)は全体の約4%弱となります。ひっぱりだこの英語ネイティブ人材を、国内で確保しようとするとなかなか難しいのがよくわかるデータだと思います。
アジア83%の内訳をみてみましょう。
東アジア(韓国、中国、台湾、朝鮮、モンゴル)が63%、東南アジア(インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、東ティモール、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオス)が29%、南アジア(インド、パキスタン、バングラデシュ、スリランカ、ネパール、ブータン、モルディブ)が7%、西アジア(アフガニスタン、アラブ首長国連邦、バーレーン、イラン、イラク、イスラエル、ヨルダン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、シリア、トルコ、イエメン、パレスチナ)となっています。※国連による地理区分で西アジアに分類されている国でも、法務省統計でヨーロッパに分類されているものは西アジアに入れておりません)こうやってみると、日本にいる外国人の、全体の52%は東アジアのご近所さんからの来日だということがよくわかります。
続いて属性別でみていきましょう。
国籍別のランキングTOP10です。国籍別でみると、最も多い国籍1位は中国、続いて2位は韓国で、ここ数年不動です。3位、4位はブラジルやフィリピンなどで前後することが多かったのですが、近年はベトナムが上位にくいこんできています。理由は留学生が急増している為です。留学生については、のちほどお話をしたいと思います。
続いて都道府県別ランキングをご覧ください。こちらは、東京、愛知、大阪、静岡、福岡の主要都市+そのベッドタウンエリアという構成になっており、一都三県(東京、埼玉、神奈川、千葉)だけで41%を占めています。ちなみに、東京在住の外国人で一番多い国籍は中国ですが、愛知県・静岡県で一番多い国籍はブラジル、大阪は韓国となります。愛知県・静岡県は、日本を代表するメーカーさんの生産拠点が密集していますので、その現場で働く日系ブラジル人の方が多い為ブラジル国籍が1位となります。大阪は韓国籍をもつ特別永住者の方が多い為、韓国籍が1位となります。
次に在留資格別ランキングをご覧ください。1位は永住者で全体の30%、続いて特別永住者、留学生の順となっています。日本の企業で働いている外国籍の多くは「技術・人文知識・国際業務」という在留資格の方になり、約16万人で全体の6%強となっています。(就労の在留資格は他にも沢山ありますが、留学生から日本企業に就職するような方の90%近くは 技術・人文知識・国際業務 の在留資格となります)また、労働力不足の解消として話題になっている技能実習生は、約22万人で10%弱を占めており、これから増加するものと思われます。
日本在留の留学生は、約27万人
留学生は、2016年末の統計データで、277,331人・国籍は186ヶ国(+無国籍)で、こちらも過去最高となります。1983年の中曽根内閣時代に、留学生10万人計画が掲げられてから、留学生が徐々に増加しました。留学生においては、リーマンショック後でも増加しており、2010年に約20万人に突破、東日本大震災と原発事故で減少しました。当時、一時帰国した留学生は多かったのですが、1か月後の2011年4月には、日本に戻ってきている留学生が多かったという印象です。また、本人は日本に戻りたかったけれども両親から反対されて日本に戻る事を断念したり、両親にパスポートを隠されてしまい戻れなくなったというエピソードもありました。
留学生の国籍別ランキングを見てみましょう。
もっとも多い国籍の留学生は、1位:中国、2位:ベトナム、3位:ネパールとなります。なんと中国、ベトナム、ネパールの留学生で全体の70%強を占めています。2013年頃からベトナム、ネパールの2国が急増し、それまで2位だった韓国を追い抜きました。なぜ、ベトナム、ネパールが急増したかという理由は2つあって、1つは、中国の経済成長にともない、中国人学生が欧米圏に留学する人が増えてしまったという事です。この頃からすでに、”日本でしか通じない日本語を学んで何のメリットがあるのですか?”と言われる時代に突入していて、英語・中国語を勉強したほうが稼げる時代になっているのです。そう考えると、たかだか1億2700万人程度が使う言語、日本でしか通じない日本語をわざわざ学びにきていただける留学生はとても貴重です。日本が大好きで留学先に日本を選択していただいている留学生に感謝するとともに、もっともっと活躍していただく必要があると思っています。もう1つの理由は、中国・韓国の経済成長にともない、留学エージェントへの紹介料が高くなってしまい、日本語学校さんが遠慮しはじめたという背景があります。多くの日本語学校さんは、現地の留学エージェントにたのんで日本にきてくれる留学生を募っているのですが、紹介してもらうにもフィーが発生します。高くなってしまった紹介フィーを抑えるために、東南アジアに注目、ビザの緩和とともにベトナム・ネパールの留学生が増えたという背景です。個人的には、2016年のTOP10にスリランカがランクインしたことが予想外でしたので衝撃的でした。
採用計画への活かし方
採用計画を立てる際に、日本在住の外国人材の母数によっては、国内で採用するのか、海外採用するのかの選択が変わるかと思います。例えば、英語ネイティブの英語教師を採用しようと計画されている場合、英語ネイティブの層は全体の約4%で9万人強、その中で、年齢層は?性別は?日本語レベルは?経験は?と絞っていくと母数が減っていきます。母数によって、現実的に確保できそうかどうかを予測し、海外採用にふみきるのか?英語ネイティブにこだわらず、第二言語として英語を使用しているネイティブに近い層まで広げるのかの選択が変わってくると思います。
ほかの言語や職種も考え方は同様です。いま、募集されている求人になかなか応募がこないな・・と感じていらっしゃる採用担当の方は、そもそもターゲットが国内に存在しない可能性もあります。ぜひ、一度、法務省の「在留外国人統計」をもとにターゲットを見直すことをお勧めいたします。
なお、ターゲット選定などで、わからない事などありましたら一緒に選定や求人計画のお手伝いをさせて頂きますので、お気軽にご相談ください。当社では、毎週木曜日に 【毎週木曜10:00開催】外国人採用 個別相談会と外国人と働く職場見学会を実施しておりますので、ぜひお気軽にご参加ください。