外国人の就労者数が過去最高となり、誰もが隣で外国人が働く時代がやってきました。当社グローバルパワーは、外国人の人材派遣・外国人の人材紹介サービスで15年以上たちますが、外国人従業員とのトラブルに関する相談も多くなってきました。
今回は、外国人採用・雇用後によくあるトラブル5選と、企業におけるその対応策についてお伝えします。よくあるトラブルと対応策を知ることでトラブルを未然に防ぐことができます。マネジメントに活かして、日本人にとっても外国人にとっても気持ちの良い職場・活躍できる職場をつくって参りましょう。
外国人採用後のトラブル1.違法行為・信義則違反に対する感覚の違い
外国人採用後のトラブル2.給料や昇給・ボーナスについてオープンに話す
外国人採用後のトラブル3.外国人同士でかたまる 日本語を使わない
外国人採用後のトラブル4.外交問題を職場にもちこむ
外国人採用後のトラブル5.転職に関する意識の差
外国人採用後のトラブル まとめ
外国人採用後のトラブル1.違法行為・信義則違反に対する感覚の違い
外国人の母国では大した罪にならないことが、日本では大きな罪になることがあります。たとえば、著作物の複製や贈収賄です。世界には「職権を乱用し私腹を肥やす」習慣が根強く残っている国は少なくありません。職権乱用はよくある話で 「乱用は権利の1つ」だととらえることさえあるそうです。
以前、ニュースで50万円の贈収賄事件が流れたとき、そのニュースを見た外国人は、「日本では、たった50万円でも大きなニュースになるのですね」と言っていました。その人の母国では、「たった50万円程度」の贈収賄はよくある話で、ニュースにもならない金額なのだそうです。このような感覚の違いがあると、「このぐらいは大丈夫だろう」という気持ちで、違法行為や会社の規則違反をしてしまう可能性があります。
実際に、外国人社員が社員割引制度を利用して、商品を割引価格で大量に購入し母国の友人らに販売、しかも定価で転売し、その分の利益を得ていたが、まったく悪いことと思っていなかった、という事例があります。
著作物の複製に寛容な文化で育った人はやはり、著作権の複製に関しては意識が甘いですし、職権乱用が頻繁に行われる国で育った人は、やはり職権乱用に対して意識が甘くなってしまうものです。
対策としては、仕事をするうえで何が違法行為になるのか、会社として何が規則違反になるのかを、できるかぎり明示することです。「社内で知り得た機密情報を社外に開示しない」という規則であれば、機密情報とは具体的に何を指すのかを明確にします。「機密情報とは会社の財務状況・取引情報・個人情報・社内で作成した統計資料等を指す」などの文言を補足し、だれがみても明らかな状態にしておきましょう。グローバル展開している外資系企業の入社書類は、どの国の文化圏の人がみてもわかるように、明確に事細かく書いてあるものが多いので、参考にするといいでしょう。
違法行為を防ぐことは、会社を守るためであり、社員をまもるためでもありますので、しっかり整備をしていきましょう。
また、違法行為まではいかなくとも、「嘘をつく」「ごまかす」「約束をやぶる」「主張を簡単に覆す」などの信義則違反行為も、日本で働くビジネスパーソンにとっては信用問題にかかわります。「嘘をつく」「ごまかす」「約束をやぶる」「主張を簡単に覆す」とい行為は、取引関係にも影響をしますので、外国人社員にはしっかりレクチャーをし、信義則違反に関する感覚の違いを先輩社員などがカバーできる組織体制を整えておくと良いでしょう。レクチャーの方法は、「信義則違反をすることで、あなたにとってどんなデメリットがあるのか」など、メリット・デメリットをしっかり伝えると効果的です。(参考記事:現場での外国人マネジメント ~5つの大事なこと・注意点とコツ~)
外国人採用後のトラブル2.給料や昇給・ボーナスについてオープンに話す(中国語圏)
日本人は、家族や親しい間柄、特別な事情がないかぎり、お互いの年収に関してオープンに話をすることはありませんが、中国語圏では、同僚と自分の年収についてオープンに話をします。
会って間もない新入社員に「あなたの年収はいくらなのか」と聞くこともありますし、給料日に給料明細を見せ合うこともあります。ボーナスの金額についても、お互いに話をします。※当社グローバルパワーで把握している限り、中国語圏の外国人にこのような傾向があります。
このように、お金の話に関してオープンな国の外国人があつまる職場では、同僚同士がお互いの給料を把握していますので、昇給額・ボーナス額に差がある場合、「あの人と同じ仕事をしているのに、なぜ私の給料のほうが低いのか」、「私はあの人よりも、多く言語を話せるのに、なぜ給料が同じなのか」「あの人より私の方が入社が先なのになぜ、ボーナス額が低いのか」と上司が外国人に詰め寄られるということがよく発生します。
上司が理由を説明する際も、少しでも矛盾や隙があれば、「では、この場合はどうなのか」、「でもあの人はこうだ」と追求され、瞬く間に同じ文化圏の外国人に広まり、1人1人に説明をするはめになるという事態が発生します。また、この事がきっかけで、組織への不信感となり離職をするということも珍しくありません。
対応策としては、給与基準と査定基準をできるかぎり明確にしておくことと、現場のマネージャーが給与基準と査定基準をしっかり理解をして、いつでも説明ができるようにしておくことです。「長く働いてくれたからそろそろ昇給」、「なんとなく仕事がうまくできるようになったからこの給与額」では、いざ説明を求められたときに納得がいく説明にはなりません。しっかりと整備をしておきましょう。
余談ですが、当社グローバルパワーでの経験上「給与の話はしないでくださいね」と念をおしても、効果はまったくありませんのでご注意ください。
外国人採用後のトラブル3.外国人同士でかたまる 日本語を使わない
外国人社員が複数名在籍した場合、同じ国同士や同じ母語同士が仲良くなるのは必然ではあります。ただ、これが極端になると外国人同士でかたまり社内で孤立をしてしまったり、社内のコミュニケーションも母語でとりあい、同僚の日本人が理解できず話についていけない、日本人上司が良いアドバイスできなくなる、など日本人をはじめ、その言語がわからない人たちが置き去りにされるケースが発生しています。
また、同じ国の外国人社員が、” 母語で雑談をしながら、チラチラ日本人社員をみて笑う” という状況にでくわし、日本人社員は「私の悪口を言っているのではないか」と想像してしまい、それが勘違いであったとしても、なんとなく気分の悪い思いをする、外国人社員との関係が悪化、職場の雰囲気が悪くなるというケースもある様です。
対応策としては、「仕事で母語を使う必要がない時には、社内公用語である日本語を使う」「ランチタイム等の雑談時であっても、1人でも使う言語がわからない人がいる場合は公用語の日本語を使う」などのルールを設けると良いでしょう。社内公用語を日本語にすることは、外国人社員の日本語力を向上させることにも役立ちます。
また、外国人社員が同じ国同士で固まってしまう原因・職場環境も考えましょう。外国人社員が日本人社員となじめるように、ランチ会を開催する・社内SNS等を活用するなどして、コミュニケーションが生まれる機会を提供すると良いでしょう。
外国人採用後のトラブル4.外交問題を職場に持ち込む ハラスメント
世界ではまだまだ紛争や内戦が絶えず、平和な日本であっても外交問題は絶えません。外国人が身近な職場では、このような外交的な事情が職場のトラブルになることがあります。
実際に、ある職場で発したトラブルをご紹介します。
・母国では民族同士の紛争が続いており、その民族の当事者であった外国人同士がそのことで口論になり、取っ組み合いの喧嘩に発展した。
・日本で竹島の領土問題がニュースになっていたとき、職場の日本人社員が面白半分で韓国人社員に「竹島ってどこの国だと思う?」と質問、韓国人社員は「私に “竹島は日本のものです”と言わせたいのですか。言わせて何になるのですか。ただの自己満足ではありませんか」と憤慨した。
外交・政治をテーマに外国人と議論をするのは構いませんが、外国人個人をあたかもその国の代表かのように責め立て、人格を否定するようなシーンを見かけることがあります。これは、外国人に対する一種のハラスメント行為になります。
企業の対策としては、パワハラ、セクハラ指導と同様に、外交問題に関する追求は、外国人への嫌がらせ行為・ハラスメントとして予防・教育メニューに盛り込むとよいでしょう。
国同士・民族同士の問題は、企業としてはなかなか介入できる内容ではありませんが、少なくとも職場とは、同じ目的にむかって切磋琢磨する仲間同士が集う場所です。個々の事情があるにせよ、「職場ではお互いに力を合わせるべきだ」ということをしっかり話し、視点を企業の目指す方へ向けてあげるといいでしょう。
さまざまな国の人が同じ職場で同じ目的をもって働くということは、平和の証でもあるのです。
外国人採用後のトラブル5.転職に対する意識の差
外国人は転職に対する認識が日本人とは違います。日本は「石の上にも三年」という言葉があるように、1つのことを長く続けることを評価する傾向があり、「転職回数が多い人は何か問題があるのではないか」とらえられることが多くあります。
反対に、海外では転職をすることが一般的で、国によっては転職をしていない人は、「人脈がない」「キャリアのことを考えていない」と、問題がある人なのではないかととらえることがあります。外国人にとって、転職は非常にポジティブで、その判断も日本人が考える以上にスピーディーです。
外国人は日本独特の制度である、終身雇用・年功序列・ジョブローテーションなどの仕組みを知りません。したがって、ゆっくりとした昇進や希望に合わない配属の意味がわからず、それを不満に感じ転職を決意することが多くあります。
また、会社への不満がまったくなく、愛着や忠誠心があったとしても、そのことと自分のキャリアアップはまったく別ととらえていますので、「自分の能力が活かせない環境だ」、「もっと成長したい」と感じると、転職してしまうことがあります。したがって、「先日の面談で ” この仕事は楽しい ” と言っていたのに、なぜ?」というタイミングで離職をすることもあります。
対応策としては、「なぜ、いまこの仕事をしてもらっているのか」、「将来はどのような役割を担ってほしいと考えているのか」、「そのためにどのようなスキルや経験をみにつけて欲しいのか」といったキャリアパスやビジョンを、日本人以上に頻繁に話す機会を設けることです。終身雇用・年功序列・ジョブローテーションなどの人事制度についてもしっかりレクチャーをする機会があると良いでしょう。
「この会社にいれば自分は成長できる」「この会社にいれば、自分の未来は明るい」と思える組織は、外国人にとっても日本人にとっても魅力的です。知らなかったが故の不幸な離職を防ぐためにも、コミュニケーションの機会を積極的に増やしましょう。
外国人採用後のトラブルと対応策 まとめ
外国人採用後のトラブル5選とその対応策をお伝えしましたが、いかがでしたか?
・トラブル1.違法行為・信義則違反に対する感覚の違い→事前にレクチャー、カバーできる体制をつくる。
・トラブル2.給料や昇給・ボーナスについてオープンに話す→給与体系など現場レベルでしっかり把握する。
・トラブル3.外国人同士でかたまる→社内公用語を日本語に。交流を促す仕組みづくりを。
・トラブル4.外交問題を職場にもちこむ→ハラスメント対策として社員教育を。
・トラブル5.転職に関する意識の差→日本人以上に仕事の意義と未来を語る。
これまでご紹介した対応策は、外国人採用や雇用を支援して15年以上でつちかったノウハウです。このノウハウが少しでも、外国人雇用をすすめる日本企業のお役にたてれば幸いです。
ぜひ、この記事をご覧になった方で、これ以外も、外国人雇用におけるトラブルや対応策の事例があれば教えていただけると嬉しいです。