お互いに歩み寄ることで、外国人材は大きな力を発揮する〜外国人雇用企業へのインタビュー 株式会社マーキュリー~

今回は、セールスプロモーション業界で存在感を発揮する、株式会社マーキュリーの取締役社長 秋間 剛様に、外国人材の採用戦略、さらに今後の展望についてお話を伺いました。国内採用はもちろん海外採用も実施、充実したフォロー体制を構築している同社の取り組みには、多くの参考となる点があります。


株式会社マーキュリー
取締役社長 秋間 剛 氏
 

会社プロフィール
ホームページ:https://mercury-group.co.jp
設立:2006年11月21日
従業員数:5,437名(うち外国籍社員 4.5%/2024年4月時点)

外国人留学生の高い日本語力や学力に驚き、本格的に外国人採用を開始

利重:貴社の事業内容や特徴を教えてください。

秋間氏:当社はセールスプロモーションに強みを持つアウトソーシング企業です。営業・販売・接客分野の人材サービスを中心に、委託業務を含めた多様なニーズに応えた事業を展開しています。2020年のコロナ禍前までは、接客・販売などの営業系の業務が中心でしたが、コロナ禍以降は、ホテル・宿泊業界の人材不足が顕著だったため、それを機にホテル業界への支援を拡大しました。現在は、セールスプロモーション以外にも多方面で事業を展開しています。

利重:外国人材採用の背景を教えてください。

秋間氏:外国人材の採用は、約8年前に少しずつスタートしました。当社は新卒採用を積極的に行っていますが、その頃から外国人留学生の応募が自然に入るようになりました。特に驚いたのは、留学生の高い日本語力や学力で、面接官の間でも大変評判が良かったことがきっかけで、本格的に外国人採用を始めました。

さらに、訪日外国人観光客の増加に伴い、接客・販売の現場で英語や中国語、韓国語など多言語対応が求められるシーンが増えました。こういった現場でのニーズに対応する中で、多言語対応ができる外国人材を積極的に活用することが有効だと考えました。

あくまでも、当社の外国人採用は「顧客ニーズへの対応」というよりも、日本人を対象としていた通常の新卒・中途採用の選考プロセスの中で自然に外国人採用の増加を実現してきた点です。私たち自身が外国人材の可能性に気づき、本格採用に踏み切った結果、後々の顧客ニーズに答えられるようになりました。これは、今振り返ってみると興味深い点だと思っています。

現在では、社員約5,000名のうち、220名が外国籍の社員で全体の4.5%を占め、中国や韓国を中心に16カ国以上の社員が活躍をしています。

面接の工夫は「突発的な質問で日本語力を見抜く」こと

利重:外国人材の採用方法や選考過程で工夫している点を教えてください

秋間氏:当社の外国人採用は、国内採用と海外採用がおおよそ1:3の割合です。

国内採用では、日本人向けの新卒・中途採用と同じ選考プロセスで行い、通常の採用基準に基づいて選考を行っています。

海外採用では、採用ツアーとして現地に赴き、会社説明会・テスト・面接を数日で行うなど、時間の制約があるため効率的なプロセスを重視しています。場合によっては1日ですべてを完結させて、その場で内定を出すこともあります。

テストは、漢字の読み書きや語彙力を問う日本語テストです。選択問題や日本で気になったニュースに関する作文などを書いてもらうなどして、日本語力を確認します。日本語能力試験でN2レベル以上が採用の基準です。

面接では、「言葉のキャッチボールができるかどうか」という意思疎通力を特に重視しています。

さらに、エージェントを介して採用する際には、事前の面接対策が実施されているケースが多いため、前回の面接で使った質問と同様の質問をすると、求職者の方がとても上手に回答されるなど、本来の日本語力が見極められない事があります。そういったケースを避けるために、事前準備が難しい質問を意識しています。例えば、趣味が料理であれば「その料理の作り方を日本語で説明してください」のような突発的な質問を投げかけるように意識しています。

文化や商習慣の側面においては、中国の場合は、面接官にニコニコと笑顔を見せる習慣はあまりないようです。販売・接客分野では「笑顔で対応できること」が大切なポイントですので、面接以外の様子を見て自然に笑顔が出る方かどうかを確認したり、雑談などをしたりします。

よく場を和ませるために「私は、何歳に見えますか?」と質問をするのですが、皆さんが笑ってくれます。これは、韓国、中国、スリランカでも笑ってもらえたので、きっと万国共通の笑ってもらえるネタなのだと思っています。

文化的な背景を理解・尊重し、前向きな質問でトラブル解決に導く

利重:入社前後の研修やフォロー体制について教えてください。

秋間氏:海外採用については、内定から入国までの期間に日本語レベルを維持するためのサポートを行っています。月に1回のオンライン座談会を実施し、日本語を話す時間を設けています。顧客コミュニケーションを想定した会話シーンを映像で見てもらい、実践的なビジネス日本語を経験するなど、eラーニングを活用した日本語学習の機会を提供しています。

入社後は、国内採用・海外採用・国籍に関わらず、日本文化やビジネスマナーの研修や、コンプライアンス研修を数日間にわたって実施しています。

現場配属後は、フォロー担当社員が定期的に訪問し、業務の習得状況や、同僚や顧客とのコミュニケーションがうまく進んでいるか確認を行っています。仕事がしやすい環境や関係づくりができるようにサポートをしています。万が一、トラブルが発生した際には迅速に対応をしています。

フォロー担当社員には、各国の文化や価値観を理解するための異文化研修を実施しています。文化的な背景を理解・尊重した上でサポートをするのと、しないのでは伝え方や結果が違ってきます。「なぜ、それをやってしまったの?」という問いではなく、「次からはどうすればもっと良くなると思いますか?」のような前向きな質問に変えることで、解決策を見つけられるよう工夫しています。

仕事への高い意欲とスピード感が高評価

利重:外国人社員の方々に対するお取引先や社内での評価はいかがですか?

秋間氏:良い評価としては「外国人材が想像以上に優秀だった」という声を多くいただきます。当社の社内においても、日本人以上に仕事への意欲が高く、結果へのスピード感のある対応をしてくれるという点で、刺激を受ける日本人社員も多くいます。

一方で、悪い評価としては、文化的な違いによる「誤解」が多い傾向があります。例えば、「安易に認めない」「自分は悪くないと主張する」という文化背景がある外国人材の方の場合、日本人から見て、学ぶ姿勢が欠けているように映ることがあります。こういった「誤解」を解消するためにも、異文化を知ろうとする相互の理解と適切なコミュニケーションへの啓蒙が重要だと思います。

「やる気」や「伸びしろ」に目を向けることで可能性を最大限に引き出せる

利重:これから、外国人採用に挑戦する日本企業にメッセージをお願いします。

秋間氏:外国人材は大きな可能性にあふれています。しかし、現状では「日本語力」だけで判断されることが多く、優秀な人材の採用チャンスを逃している企業がまだ多いと感じます。

採用企業側が外国人材の文化背景や価値観を考え、外国人材の「やる気」や「伸びしろ」に目を向けることができれば、彼ら彼女らの持つ力を最大限に引き出せるはずです。お互いに歩み寄ることで、外国人材は大きな力を発揮します。ぜひ、積極的に外国人材採用に挑戦していただきたいと思います。

ABOUTこの記事をかいた人

株式会社グローバルパワー 取締役 1979年 山口県生まれ。広島県の呉大学(現:広島文化学園大学)社会環境情報学部を卒業。大手人材サービス会社の営業を経て、2010年 外国人派遣・紹介サービスの(株)グローバルパワーに入社、2012年 取締役に就任。2017年 外国人雇用とマネジメントのすべてがわかるWEBサイト「グローバルパワーユニバーシテイ」編集長。