ここ数年のトレンドワードである「働き方改革」、あなたの職場では進んでいますか。
私は、外国人雇用とマネジメントにに関わる仕事をはじめて9年になりますが、「働き方改革」「生産性向上」について外国雇用が有効ではないかと考えています。
今回は、外国人雇用を通じて、多様化する組織の先にあるもの、について考えていきたいと思います。
外国人雇用はなぜ必要なのか?
2019年4月より、入管法の改正で「特定技能」という新しい在留資格が創設されました。単純労働の領域において、外国人雇用を解禁、未曾有の人手不足の解消の一手となりました。
日本は、総人口に占める65歳以上の高齢者割合28.1%(2018年)と超高齢社会、合計特殊出生率は1.43(2018年)と低水準で推移しており、「少子高齢化」でいまだかつてない人口減に直面しています。
人口減で国内市場は縮小、成熟した日本経済においては、単純に物をつくりサービスを提供しただけでは商品は売れず、いままでにない新しい価値を創造するようなものや、人間社会の問題を解決するような革新的なサービスでなければヒットをしません。
また、人口減で有効求人倍率はバブル期を超え、未曾有の人不足です。外食産業では「人不足で閉店」というニュースが流れてくるようになり、日本企業をとりまく環境は、大変厳しい状況です。
企業は「事業を伸ばし続ける事」が使命の1つです。国内市場が縮小する中、海外展開を考える企業は多いでしょうし、国内市場向けのサービスであったとしても、未曾有の人手不足においては、外国人雇用を検討せざるをえない企業も多いのではないでしょうか。このような環境の中で、外国人雇用は企業にとって ” あまりにも必要 ” と言わざるをえません。
多国籍で多様化する組織の先にあるもの
昭和の高度経済成長期の日本企業は、日本で生まれ育った20代~50代の日本人男性が中心で、平日は朝から夜まで仕事、土日もゴルフで接待など人生の大半を仕事に費やし日本経済をリードしてきました。
そして平成、バブル崩壊・世帯年収の減少・共働き世帯の増加・総人口の減少・高齢社会への突入・未曾有の人不足など社会的に大きな変化がありました。
職場は、働きざかりで同じような価値観をもつ日本人男性だけではなく、女性・子育て世代・介護世代・高齢者・外国人・障がい者・LGBTなど、限られた時間しか仕事ができない働き手や全く違う価値観や特性をもった働き手など多様化してきました。
企業の経営者は、働く時間に制限があり、多様な価値観や特性を持つ人材が活躍し、より長く働いてもらうために、属人的な業務を極力排除、人間がやらなくても良い仕事は機械化し、日本語がネイテイブではない外国人でも間違いなく業務が遂行できるように、仕事の仕組みを変えていかなくてはならなくなりました。また、人事制度を変え、時には働く場所を指定しない、など制度の改革もしていかなければならなくなりました。
これらの変化に対応できない企業は、多様性ある人材らから選んでもらえない企業となり、事業の存続が危ぶまれる状況です。
企業の「変化」は、言うは易し行うは難し、組織としての痛みをともなう事も多くあります。企業は痛みをともなってまで変化し続け、多様性ある人材が活躍できる組織づくりの先には何があるのでしょうか。
多様性は企業の力!新しい価値の創造
組織が多様化することで得られるものは何でしょうか。
それは「新たな視点が生まれる」ことです。
私の知人の話ですが、知人はある大企業の設備管理責任者をつとめています。最近、結婚をしてお子様が生まれた事で、はじめて妊婦や子育てをする親の視点で自社の設備の在り方を考えるようになった、と言います。「授乳室の数と設備は充分か」「施設内はベビーカーでも不自由なく移動できるようにスロープはあるか」と確認して回ったそうです。
これは、自分の価値観とは全く違う人が身近にいることで、新たな視点が生まれた事例です。周囲に同じような価値観をもつ同質の人たちだけで生活をし、組織運営をしていたら、このような視点が生まれることはなかったでしょう。
この知人が管理をする施設は、妊婦や子育てをする親にとってやさしい施設となり、子育て世代に選ばれる企業になる事は間違いないでしょう。
米国のコンサルタント会社、マッキンゼーの調査※によると「経営幹部における人種の多様性が高い上位25%の組織は、同業他社の中央値よりも35%業績が良く、性別においては同業他社よりも15%業績が良い」という報告があります。
また、国際通貨基金(IMF)は、過去約40年間にわたる各国の経済データを基に分析したところ、総雇用者に占める移民の割合が1%増えると、先進国では5年後に実質国内総生産(GDP)が約1%拡大するとの試算をまとめています。(2020年7月)
多様性は、新たな視点を生み、新たな価値を創造し、イノベーションを起こす企業の力となるのです。
外国人雇用は働き方改革に有効、生産性向上の切り札
日本生産性本部のレポート「労働生産性の国際比較 2018」によると、日本の時間当たりの労働生産性はOECD加盟36カ国中2位、主要先進 7 カ国でみると最下位という残念な結果となっています。
各産業におけるIT活用の遅れを中心に様々な要因があると思いますが、私は、日本人のコミュニケーションスタイルも生産性が向上しない要因の1つではないかと考えています。
日本人のコミュニケーションスタイルは、明確な言葉で伝えなくても状況や文脈で相手が伝えたい事を理解してくれるハイコンテクスト文化の極みだと言われています。ネガティブな事や相手を批判する事を、ストレートに伝えることはせず、曖昧さをのこしたり遠回しに伝えるコミュニケションの取り方をします。
また、日本のビジネスシーンにおいては、お客様や上司が求めているだろう事柄を、具体的な依頼がある前に着手し、さらにその周辺業務もカバーできている、というように「空気がよめる」「行間がよめる」「忖度できる」と、”仕事ができるビジネスパーソン”だと評価をされる傾向があります。反対に「指示されないとできない」「指示された事しかやらない」と ”できないビジネスパーソン”という印象になってしまいます。
だからこそ「日本のサービス・ホスピタリティーは素晴らしい」と海外から高く評価をされる所以ですが、その裏では、お客様や上司が求めている事柄の見込み違いで「余計な仕事をしてしまった」という方も実は多くいるのではないでしょうか。
外国人は、日本人のように「空気をよむ」「行間をよむ」「忖度する」事ができませんので、しっかりと明確な言葉におとし、具体的な指示をしなくては仕事をしてくれません。 また、仕事の背景を「ルールだから」「いままでの習慣だから」という説明しかできないような仕事は、やる意味を理解してもらえずやってもらえません。
そして、外国人は上司が残業しているからといって、無駄に会社に残るようなことはしません。事実、当社グローバルパワーのお取引先は、「外国人雇用をはじめてから、残業がなくなりました。だって、外国人って残業してくれないから・・」という話がありました。
外国人に仕事で成果をだし活躍してもらう為には、仕事の範囲とタスクを明確にし、明確な言葉でしっかりコミュニケーションをとる必要があります。
明確な仕事の指示と明確なコミュニケーションは外国人のみならず、日本同士であっても無駄がなく効率的だと思いませんか。
外国人が活躍できる組織づくりは、プレミアムフライデーやノー残業デーを導入するよりも、もっとも有効な働き方改革、生産性向上の手段になるのではないでしょうか。
日本企業の伸びしろは大きい、再び世界のリーダーに
日本のGDPは中国にぬかれ、GDP総額は減少をするばかりですが、日本企業の多国籍で多様性ある組織づくりはスタートしたばかりです。
これから、まだまだ新しい価値の創造をし、生産性を高める余地があると思うと、日本の企業の伸び代は大きいと思いませんか。
日本企業が多様性を組織の力に変えることで、再び世界の企業から研究対象とされるような、世界のリーダーになることを信じてやみません。