法務省の入国管理局から平成28年度(2016年)、外国人留学生の就職状況報告が発表されました。みなさんは、外国人留学生の就職率はどのぐらいかご存知ですか?ちなみに、未曾有の人手不足と若者不足もあって、日本人大学生の平成28年度の就職率は97.6%となります。
「うーん・・最近、新卒社員の中に留学生が何割か含まれるようになったというニュースも聞くし。」と考えている方も多いのではないでしょうか。早速、就職状況報告とともに見ていきたいと思います。
(出典:法務省 外国人留学生の就職状況報告より)
日本在住の外国人は約247万人、うち留学生は約29万人
国籍別ランキングはこちらです
ここ数年は、ベトナム、ネパールの留学生が急増しており、お隣の韓国を抜き、TOP3にランクインしているのが特徴です。
就労目的の在留資格変更は約2万人、前年比で24.1%増加
平成28年度、在留資格が「 留学」、「特 定 活 動 ( 継 続 就 職 活 動 中 の 者 , 就 職 内 定 者 等 )」 から、就職を目的とする在留資格に申請をした数は21,898人、 うち19,435人が許可となり、前年の許可数である15,657人よりも3,778 人( 24.1 % )増加しています。
就職を目的とした在留資格を変更した国籍ランキングはこちらです。
中国が1位、続いて留学生数がぐんぐん伸び続けているベトナムが2位、続いて韓国、ネパール、台湾となっています。
全体の割合を見てみましょう。
中国籍の方だけで全体の半数を占めており、上位5位の国籍だけで全体の86%を占めているという構図になります。
就職をした留学生の出身地域別でみてみましょう。
出身地域別でみると、アジアだけで95.5%を占めています。日本での就職は圧倒的にアジア圏の留学生が多いということがわかります。
つぎに、最終学歴別でみてみましょう。
最終学歴は、大学卒業が46.0%と最も多く、次いで大学院の修士号または博士号が27.2%となっており、大卒・大学院卒の両者で全体の73.2%を占めています。また、専修学校卒業が18.6%となります。
約90%の留学生は、在留資格「技術・人文知識・国際業務」
留学生が就職した場合、在留資格を「留学」または「特定活動」から、就労できる在留資格に変更します。日本では33種類(2017年9月より介護が追加され、34種類)の在留資格があるのですが、留学生がごく一般的な「就職」をする場合の就労における在留資格は限られており、約90%の方が「技術・人文知識・国際業務」になります。
「技術・人文知識・国際業務」とはどのような在留資格になるのかというと、法務省によると”本邦の公私期間との契約に基づいて行う理学、工学、その他の自然科学の分野もしくは法律学、社会学、その他の人文科学の分野に属する技術もしくは知識を要する業務または外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務に従事する活動”との事です。少しわかりづらいかもしれませんが、職種で言うとエンジニアや営業、マーケティングなどの事で、要は、雇用する外国人留学生が保有している技術や知識、言語能力を活用して仕事をしてもらう為の在留資格で、一般的な企業等の正社員で働いている外国人の方は、ほぼこの在留資格と言っても良いでしょう。逆を言うと、外国人が保有している技術や知識や言語能力を全く必要としない仕事においては、この在留資格は許可されません。
約5%を占める「経営・管理」とは自分で会社を経営し代表取締役になる場合や、取締役として企業の経営に関わる事です。また、大学などの研究や研究指導をする大学教授のような仕事に就く場合は在留資格が「教授」、医師や看護師のように医療にかかわる業務に従事する場合は在留資格が「医療」となります。
余談ですが、在留資格とビザ(査証)は違います。ビザは外国人が日本に入国する際の許可・資格であり大使館や領事館で発給されますので外務省の管轄となります。在留資格は日本への入国後の滞在と活動の許可・資格であり、法務省の管轄となります。在留資格のことを便宜上、ビザと言うことも多いのですが、厳密には違いますのでご注意ください。
就職先は、非製造業で約85% 職種は通訳・翻訳が1位
つぎに、留学生の就職先の企業について見てみましょう。
就職先の業種は、非製造業が全体の84.3%で、製造業が15.7%で圧倒的に非製造業への就職となっています。非製造業では、貿易などの商業分野、コンピュータ関連のサービスが上位を占めており、製造業では食品、電機分野が上位を占めています。
つぎに職種別です。
職種別でみると、翻訳・通訳業務が24.0%で最も多く、続いて販売や営業が15.2%、海外業務が9.9%、技術開発が6.4%となっています。この4職種で全体の半数、55.5%を占めています。
お給料別でみてみましょう。
お給料別、月額報酬で見てみると、20万円~25万円未満が全体の49.2%と最も多く、次いで20万円未満が33.4%、25万円~30万円未満が11%の順となっています。報酬については、国籍によって差をつける事はできないことと、新卒・第二新卒の入社の場合は、日本語以外の言語ができるからといって大きく報酬に差をつける事はありませんので、日本人の新卒、第二新卒の報酬相場と変わらない結果となっています。(厚生労働省によると、2017年に入社した新入社員の初任給の平均は、20万6100円との事です。)
留学生の就職先、半数は中小企業へ
次に、就職先企業の資本金別を見てみましょう。
資本金別で見てみると、資本金500万円以下の企業への就職20%と最も多く、資本金3000万円以下の企業への就職が50.9%と過半数を占めています。
従業員規模別でみてみましょう
従業員数50人未満の企業への就職が、40.4%と最も多く、これを含め100人未満の企業への就職が全体の49・6%を占めています。資本金、従業員規模をみても、留学生採用は、中小中堅企業さんが積極的に行っている事がよくわかります。
続いて、就職先企業の所在地を見てみましょう。
留学生の就職先企業の所在地を見てみると、東京都の企業への就職が47.7%と最も多く、次いで大阪府が10.2%、 神奈川県5.6%、以下愛知県、埼玉県、福岡県の順となっています。関東で64.5%、一都三県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)だけで60%を占めています。
留学生の就職率は約50%
さて、留学生の就職事情は理解いただいだと思いますが、肝心の留学生の就職率ですが、約50%だと想定しています。
上記は、在留資格を留学から就労ができる在留資格に変更した件数と、留学生数から就職希望数をだしたものです。留学生数から就職をむかえる卒業生数を1/5の20%と仮定し卒業生数を算出、卒業生のうち約65%が日本での就職希望だと仮定しています。この65%は日々留学生と接している中での肌感覚にはなりますが、進学、帰国して就職などの選択の中での日本就職希望です。この日本での就職希望は、年々下がっているような気がします。3年前までは70%~80%の留学生が日本での就職を希望していたような感覚ですので、2011年~2013年までの想定就職率はもっと低い可能性があります。2013年頃から、「日本での就職はメリットがあるのか?」「中国に戻って就職したほうが給料が良いのです」などという声が聞かれるようになりました。その就職希望数を在留資格の許可件数で割り出てきた数字が想定就職率となります。
まとめ
さて、留学生の就職率ですが、想像していたよりも多かったでしょうか?少なかったでしょうか? 留学生の就職率はまだまだ低いと思っていますし、日本で就職をしたいと思ってもらえる就職希望者もどんどん増やさなければならないと思っています。留学生自身の課題もありますし、受け入れをする日本企業組織の課題もあると思います。日本の未来をより良くするために、これらの課題は1つ1つクリアしていかなければなりません。その課題解決を、微力ながらグローバルパワーユニバーシティを通じてお役に立てればと思います。
たった約1億2700万人にしか通じない日本語と日本の文化を学びにきてくれた留学生、間違いなく親日・知日となり日本の経済と社会に貢献してくれるものと信じています。