外国人雇用企業へのインタビュー 株式会社サマンサタバサジャパンリミテッド 上席執行役員 中岡俊也氏

グローバルパワーユニバーシティ 外国人雇用の先人に学ぶコーナー第3弾は、株式会社サマンサタバサジャパンリミテッド 上席執行役員 中岡俊也氏にご登場頂きます。外国人雇用についての先進的な取り組みと、事業を成長に導いていらっしゃる秘訣、外国人雇用を通じて見える日本の未来などをお聞きしました。

中岡 俊也(なかおか としや)1966年 兵庫県生まれ。アメリカの大学を卒業後、外資系航空会社を経て 1998年 株式会社サマンサタバサジャパンリミテッドに入社。海外事業、採用担当などの要職を歴任。

心のおもてなしサービスを海外でも提供するために、戦略的に外国人社員を採用

竹内 まず読者の方々の為に、現在どのような事業をされているのか教えて頂けますか。

中岡氏 バッグとジュエリーの企画・製造・販売サービスで、代表的なブランドは「Samantha Thavasa」、カジュアルラインの「Samantha Vega」メンズライン「KINGZ by Samantha Thavasa」 、ジュエリーの「 Samantha Tiara」、及びグループ会社であるバーンデストローズ社が展開する「REDYAZEL」「and Couture」、EST社が展開する「Secret Honey」などのアパレルブランドを含め、全19ブランドを展開しています。現在、国内店舗はグループ全体で351店舗(2018年2月時点)、海外は韓国、香港、台湾、上海、シンガポール、ハワイ、ドバイの40店舗(2018年2月時点)を展開しており、2018年2月期の連結売上で32,158百万円となります。

竹内 現在の外国人の雇用状況を教えてください。

中岡氏 グループ全体の社員人数が2,086名で、外国人社員がそのうち50名です。国籍は、中国・台湾・韓国・ベトナム・ミャンマーです。

竹内 外国人の採用に至った経緯を教えて下さい。

中岡氏 2012年に初めて外国人を採用しました。当社は、2008年のリーマンショックを境にアジアに店舗展開していく計画になり、台湾に初出店をしました。台湾出店は2011年12月ですから、本来であればそれよりも、もっと前から外国人採用をして人材を育てておくべだったのですが、少し出遅れてしまいました。

サマンサタバサグループは、「良い人」「良い場所」「良い商品」「良い宣伝」という4つのファクターでブランドを作っていく事が経営戦略です。商品については、船か飛行機に乗せてしまえば日本と同じものを海外の店舗にも並べることができますが、人を介してお客様にご提供する「サービス」はそのまま輸出するわけにはいきません。海外展開をするうえでも「良い人」「良い場所」「良い商品」「良い宣伝」でブランドづくりをしていく事に妥協はありません。接客は、販売スタッフとお客様が直接触れ合う唯一の広告媒体でもあるため、日本の店舗で提供している世界最高峰のおもてなし、心のおもてなしの接客サービスを海外でも提供していきます。

ただ、文化・習慣の違いや「商品を売る」という事への考え方の違い、政治システムの違いもあり、現地の店舗スタッフに日本流のおもてなしを伝えていくことは非常に難しい事でした。

そういった中で、「現地のスタッフと同じ言葉ができるネイティブの人が、日本で日本のおもてなしを日本人からしっかり学んで吸収し、現地のスタッフに伝える事ができれば良いのではないか」ということで、日本国内で外国人雇用をスタートさせました。そして2012年に国内ではじめて外国人を2名採用しました。

株式会社サマンサタバサジャパンリミテッド 上席執行役員 中岡俊也

日本語やスキルは社内教育で補う事ができる。

竹内 2012年に初めて採用された2名の外国人はどのような手法で採用されたのですか。

中岡氏 ハローワークです。ハローワークが主催した外国人採用の合同面接会に参加をして採用をしました。今では外国人の合同面接会は出展ブースがとれないほどの人気イベントですが、当時は空きスペースも多かったです。

竹内 海外店舗の現地スタッフに日本のおもてなしを伝承していく為、2012年から戦略的に外国人雇用をスタートされたという事ですが、現在はどのような状況ですか。

中岡氏 戦略的に採用はすすめてきましたが、実際には、現地のスタッフに教育をすることに適性がある人材もいればそうではない人材もいました。また、中国本土出身者が、香港でトレーニングをすると言葉も違いますしちょっと違和感がありました。

計画通りにいかない事もありながらも、いまでは外国人トレーナーも育ち、香港・上海・シンガポール・ハワイなど各国を飛び回り、現地の店舗スタッフに日本のおもてなしをトレーニングしてくれています。

2017年の新卒採用は286名中27名が外国籍、2018年は新卒採用は315名中29名が外国籍になるのですが、トレーナー職は店長と同じぐらいのサービスレベルが身についている必要がありますので、育成に3年~4年は必要です。ですから、現在活躍してくれているトレーナーは2013年ぐらいに採用をした外国人社員たちです。

スタッフ教育の様子

竹内 採用にともなう書類選考や面接で重視している点やポイントなどありますか。

中岡氏 日本語能力は日本語能力試験N1取得者かどうかを目安にしています。ただ、接客販売員の場合は、仕事に必要な日本語は「対話・会話」の方ですので、N1取得をしていなくてもコミュニケーションレベルが高ければ選考を進めます。また、今年から、ビジネスコミュニケーションを計る、外国人就労適正試験を取り入れる予定です。

履歴書などの書類に関しては、「一生懸命書いているのかどうか」を見ています。これは、日本人も外国人も一緒です。文法の間違いや表現方法などよりも、与えられた枠の中にしっかり書いているかどうかというところです。

竹内 記入欄が10割とすると枠内に2割程度しか記入されていない書類だと、一生懸命さは伝わらないという事ですね。

中岡氏 面接も日本人も同様で、サマンサタバサグループの三原則、「元気で明るい」「声が大きい」「笑顔を絶やさない」、そういうところがあるかどうかという点です。人としての本質的な部分は、社内教育で改善することがなかなか難しいのですが、日本語やスキルに関しては社内教育で補う事が出来ます。

竹内 離職率についてはいかがですか。

中岡氏 離職率については、日本人も外国人も違いはありませんが、ファッションアドバイザーなどの販売職は比較的離職率が高い職種ではあります。店舗が百貨店などの商業施設に入っている事が多いので、必然的にほかのお店を目にする事が多くなりますし、商業施設の共同休憩所などで情報が多く入ってくる環境にありますので、3年で1回転というような職種です。ただ、当社の離職率は業界平均と比べると、低い方だと思います。

外国人社員のマネジメントを異文化交流だと思って楽しむ。

竹内 外国人を雇用して組織の変化はありましたか。

中岡氏 外国人を初採用した2012年から、訪日観光客のインバウンド需要が徐々にでてきていましたので、良い変化で言うと、訪日観光客のお客様との通訳としての役割もできるようになり、さらなる事業の売上に貢献できるようになった点です。

反対に、外国人社員は日本の当たり前を当たり前として持っておらず、言葉の違いがあるため、店舗での教育やコミュニケーションに手間取るという実態もありました。

その際は、店長に「異文化交流がタダでできるのだよ、自分が留学して異文化交流をすると相当のお金がかかるのだから」と励ましていました。

はじめは、アニメやドラマがきっかけだったとしても、世界地図でみるととても小さい島国でしか使えない言語をわざわざ学びにきて、働きたいと思ってくれるということは、日本でもっと日本人や日本の文化に接し、友達もたくさん作りたいと思っているはずです。逆に、日本人社員は、接客八大用語が中国語で言えるようになったら自分でも嬉しいはずです。「もっと異文化交流を楽しもうよ」と話をしています。

竹内 外国人の教育やマネジメントをただ「面倒くさい」と受け止めるのではなく、ポジティブに受け止めて自分のものにしていくという事ですね。 外国人社員を配属する部門に、受け入れ前の研修など実施されている事はありますか?

中岡氏 特に研修などは実施していませんが、外国人社員を受け入れ予定の店長には、外国人社員のマネジメント経験がある店長に、うまくいった事やつまずいた事などをあらかじめ聞いておくなど、なにかあれば都度相談をするように促しています。どんな時にどう対応すれば良いのかというのは当社のノウハウになります。

株式会社サマンサタバサジャパンリミテッド 上席執行役員 中岡俊也

竹内 外国人社員に日本語などの研修はされていますか。

中岡氏 今はやっていませんが、今後、外国人社員向けの導入研修を実施予定で、「日本人とのコミュニケーションの仕方」などを研修内容に盛り込む予定です。これを実施することで、外国人社員の離職率が下がるかもしれません。

竹内 人事の評価制度などはどうされていますか。

中岡氏 日本人も外国人も全く一緒です。よくも悪くも特別扱いはしません。

竹内 今後の組織づくりについてはどのようなイメージですか。

中岡氏 特に意識をして、外国人社員を増やすというような事はありません。当社に入社したいと思ってくれる人の中で基準にあう人は積極的に採用をしてきたいと思います。

やってみて初めて分かる事がある。まずは1名からでもやってみる事

竹内 これから外国人雇用をされる経営者や人事の方へアドバイスをお願いします。

中岡氏 私はアメリカに留学をした経験がありますので、外国に住むという事や自分が外国人になるという気持ちはわかる方だと思います。逆に自分が外国人になった経験がない人にとっては、「外国人の採用は難しくて特別なもの」という先入観がもしかしたらあるのではないかと思います。やってみなければ、良い事も悪い事もわかりませんし、経験値としても蓄積されません。ですから、まずは1人からでもやってみることをお勧めします。

変な例えになるかも知れませんが、障がい者雇用に関しても同様で、はじめは「障がい者雇用は難しくて特別なこと」だと思っていましたが、今では30名のチームになっており、チームがないと仕事が回らない状況になっています。やはりやってみて初めて分かることが沢山あると思いますので、思い切ってやってみると良いと思います。

竹内 これから、日本の社会において外国人雇用は進むと思いますか。

中岡氏 進まざるを得ないと思います。事実、いまはどこに行っても外国人労働者がいないと社会が回らない状況になっていますので、健全なかたちで雇用が進んでいってもらいたいと思います。

竹内 今後、外国人が日本でもっと活躍してもらうためにはどのようにすれば良いと思いますか。

中岡氏 まずは「外人」という言葉をなくすことですね。「外人」という言葉は島国メンタリテイの塊だと感じます。それでいうと「海外」という言葉も一緒ですね。まずは、「海外事業」を「国際事業」に変える事からスタートすると良いのかもしれません。

株式会社サマンサタバサジャパンリミテッド 上席執行役員 中岡俊也

 

 

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ABOUTこの記事をかいた人

株式会社グローバルパワー 代表取締役 1974年東京生まれ、群馬県藤岡市育ち。米カリフォルニア州立大サクラメント校を経て、1998年外資系ワイン商社に入社。2003年フルキャスト入社、05年社内ベンチャーとして外国人留学生採用支援事業部の設立に参画。09年事業部のMBO(経営陣による自社買収)を経て、グローバルパワーを設立。一般社団法人 外国人雇用協議会 発起人・理事。